Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】人間が人間を食べる習慣を理解すべきか?『人喰い ロックフェラー失踪事件』

 

人喰い (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズIII-8)

人喰い (亜紀書房翻訳ノンフィクションシリーズIII-8)

 

 

本書を読んで得られるのは、知識や教養などといった安易なものではない。


むしろ、自分にはまだまだ知らないことや、理解できない世界がとんでもなく広がっているということを思い知らされた。

 

サブタイトルにもなっている『ロックフェラー失踪事件』の『ロックフェラー』は、あの『ロックフェラー』だ。

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【書評】凶悪犯も、実態は凡庸な人間だった『肉声 宮崎勤30年目の取調室』

 

肉声 宮?勤 30年目の取調室

肉声 宮?勤 30年目の取調室

 

 

1988年の8月から翌年6月にかけて、4人の幼い女の子が誘拐され殺害された連続殺人事件の犯人「宮崎勤」

 

本書は、事件から30年たった今、犯人と捜査一課の大峰警部補との取り調べを録音した音声テープの内容をまとめて公開したものだ。

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時計と子どもの話

長男が小学生になって1ヶ月が経とうとしている。


体に不相応なでかいランドセルを背負って、登校班に入りなんとか毎朝小学校まで歩いて行っている。


幸い、うちから小学校までは500メートル程度。とても近い。


それでも親としては、保育園まで毎朝送り届けていたあの息子が小学生かと思うと感慨深いものがある。

 

進学に不安はつきもので、入学前にも手提げや体操服を入れる袋を用意したり、算数セットに名前をシール貼りをしたりと誰しも経験する面倒な入学準備をした。

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【書評】結局この作家は全作品傑作です。『生まれ変わり』

 

生まれ変わり (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

生まれ変わり (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)

 

 

『紙の動物園』『母の記憶に』の短編集、そして様々な中国人作家の作品を自身が精選したアンソロジー『折りたたみ北京』と、関わった作品すべてが面白かったケン・リュウの短編集第3弾。

 

で、もちろんこれも期待通りの面白さだった。

 

前2作まででは、心の琴線に触れるような泣ける話こそがケン・リュウの真骨頂だと思っていたんだが、本書収録作品はかなりバラエティに富んでいて、今までのケン・リュウ作品をいい意味で裏切ってくれた。

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【書評】まさに「秘境での生活」『ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活』

 

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

ルポ西成 七十八日間ドヤ街生活

 

 

「ドヤ」に泊まり、「飯場」で実際に働いた男のルポ。これが凄まじく面白かった。

そもそも、「ドヤ」とか「飯場」という言葉の意味にピンとこない人は多いんじゃないだろうか。

というか、今は「ドヤ」も「飯場」も準放送禁止用語らしい。

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【書評】世界は、イメージよりもかなり良くなってます『 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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まず、本書の冒頭で「クイズに答えてみよう」ということで以下のような3択問題が出される。

 

【質問1】
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?

A.20% B.40% C.60%

 

【質問2】

世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A.低所得国 B.中所得国 C.高所得国

 

【質問3】
世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A.約2倍になった B.余り変わっていない C.半分になった

 

こんな感じの、所謂「世界的な社会問題についてのクイズ」が13問ある。

 

驚くべき事に、これらの問題を先進国の人たちに出題したときの(つまり、この本を読むような人たちに対して出題したときの)正解率が、何と10%を下回るらしい。

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【書評】我々の、そしてタコの心はどこから来たのか?『タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源』

 

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源

 

 

昔、ネット情報だが「イカの目は異常に発達していて非常に高い性能を持っている。しかし、脳はそれほど発達していないので目から得た情報を処理し切れていない」というのを見たことがある。「イカは宇宙人が送り込んだ偵察用の生物兵器だ」とか、オカルトな事も書かれていて当時若かった僕は面白がって見ていたものだった。

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