Under the roof

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【書評】ファンタジーから切り取ったような光景たち『世界の城塞都市』

世界の城塞都市

世界の城塞都市


「城塞都市」と言えば?

の質問に、「メルキド」と答えるあなたはファミコンドラクエ世代。
僕ももちろんメルキドと答える。ただ、ドラクエⅠは発売当時幼かったためリアルタイムでプレーしてはなく、その後発売されたスーファミのドラゴンクエストⅠ&Ⅱでプレイした。高難易度で有名なドラクエⅡも難易度が甘くなり、快適にプレーした記憶しかない。
奇しくも明日5月27日はドラクエ発売30周年の記念日らしい。僕はドラクエⅣが好きだ。

話を城塞都市に戻す。
本書『世界の城塞都市』は、中世ヨーロッパなどで実際に建築され、今も残っている(そのまま残っていたり遺跡だったり)城塞都市の写真&解説集だ。
ヨーロッパの城塞都市が中心だけあって、ドラクエの世界観そのままのような城塞都市の写真が多く、見ているだけでもワクワクする。

本書を開いてまず最初の城塞都市がフランスの「カルカソンヌ」
カルカソンヌと言えば、iPhoneアプリにもある同名のボードゲームがある。もちろんこのゲームは城塞都市カルカソンヌをモチーフにしている。

実際の城塞都市カルカソンヌは、一番最初に収録されているだけあって、まさに城塞都市の魅力がすべて詰まった壮観さ。現存するヨーロッパ最大の城塞らしい。二重の城壁、一定間隔に造られた監視塔、城壁内に密集する建物。すべてがファンタジーの世界から切り取ったような外観で、ここがフランス国内でモン・サン=ミシェルに次ぐ第2位の観光地になっているというのも頷ける。

そしてそのモン・サン=ミシェルも、本書に掲載されている。ただ、本書では城塞都市をいくつかのカテゴリーに分けており、カルカソンヌなどは「城壁に囲まれた城塞都市」、モン・サン=ミシェルなどは「海、崖、丘を利用した城塞都市」、そして、イタリアのパルマノヴァなどに代表される、居住区域を含まない「世界の要塞」といった具合に種類ごとに分けて収録されている。

モン・サン=ミシェルは周囲が干潟に囲まれており、干潮時には海に浮かぶ城塞都市となるこれまた完全にファンタジーの世界。モン・サン=ミシェルの中央にあるのはお城ではなく修道院だが、高くそびえる中央の塔が荘厳さを醸し出している。

すべての城塞都市について、簡単な歴史的背景や立地、構造なども解説があり、城塞都市として実際にどのように運用されていたかも窺い知ることができる。
それ以外にも、巻末に歴史上なぜ城塞都市が誕生したか、なぜ日本では城塞都市が生まれなかったかなどの解説もあり、本書が歴史的建築物へ興味を伸ばす足掛かりにもなってくれそうだ。

一生のうちに一度は訪れてみたいと思わせる城塞都市たち。旅行のプランニングにも使えそうな一冊。