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Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】過酷な環境と祈りの民『極限高地』

読書

極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる

極限高地 チベット・アンデス・エチオピアに生きる


サッカーワールドカップ南米予選。
南米と言えば、ブラジル・アルゼンチンという2強、ブラジルワールドカップで日本が負けたコロンビア、南アフリカワールドカップで3位に輝いたウルグアイなど、強豪国ばかりだ。
そんなサッカー強豪国が、南米予選のアウェーでは「引き分けで御の字」とする代表チームがある。
ボリビア代表だ。

ボリビア代表チームは、有名選手等もおらず単純なチームの強さはブラジルなどに比べ相当劣る。ここしばらくはワールドカップの出場もない。
だが、ボリビアの首都ラパスで行われるホームゲームは、その特異な環境により圧倒的にボリビア代表が有利になる。

ラパスは標高3600メートル。富士山の山頂付近でサッカーをするようなもの。
この過酷な環境で、頭痛やめまい、酸欠など高山特有の症状に苦しむ対戦相手を尻目に、ホームのボリビア代表は自由自在に動き回り、圧倒的優位に試合を進めるからだ。
 
 
本書はそんな過酷な「極限高地」で、日常生活を送る人々の暮らしを切り取った写真集である。サッカーは出てこないが、民族や宗教に付随した生活の基盤を見ることができ、その土地土地の特色が色濃く写しだされている。

先に述べたボリビアと、ペルー、チリの一部を加えた「アンデス」、ヒマラヤ山脈の北側に位置する「チベット」、そしてアフリカ大陸の縮図とも言われる文化を高原という特異な環境で築いた「エチオピア」。

すべて標高2000メートル以上。地域によっては標高4000メートルにも達する。日本のどこよりも高い場所。そんな極限高地に住む人々の暮らしは、ざっと写真を見ただけでも我々との死生観の違いを強く感じる。

チベットでは、火葬にする薪がなく、土葬にすると半永久凍土により遺体が分解されないため、古くから「鳥葬」を主としてきた。ハゲタカなどの猛禽類に遺体を差し出すのだ。生命は循環し、人間もチベット高原の一部になるという、特別な死生観。
チベットでは一夫多妻制ならぬ一妻多夫制があり、兄弟でひとりの妻と婚姻し、生まれた子は長男の子としてみんなで面倒を見る。生まれた子供たちの中からひとりは寺院に修行僧として差し出す。

信心深い国家に暮らす人々でも、生活の基盤は画一化された利便性の上に成り立ち、宗教や死生観はそれに付随するものとしてとらえられることが多いが、極限高地では独自に守られてきた宗教や文化を生活に重ね合わせているように感じられる。

チベットでもアンデスでもエチオピアでも、聖地への「巡礼」をする人たちの写真が収められている。祈りが暮らしの一部になっているのだ。過酷な環境であるからこそ、神や自然に対する畏敬の念は強くなり、次第に祈りが大切になっていったのだろう。