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Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】生命の歴史最新版『生物はなぜ誕生したのか』

読書

 

生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

生物はなぜ誕生したのか:生命の起源と進化の最新科学

 

「今わかってること」が網羅された一冊。 

 

人類の歴史は、有史以降について「大きく変わる」ということがそれほどない。
マクニール著の『世界史』は、全世界で40年ほど読み継がれているベストセラーだが、この世界史に記されている内容を覆すような大きな発見はまず起きない。確実にわかっていること、記録として記されていることが多く、謎となっている部分も少なからずあるが、主だった世界の歴史については判明していることが多い。

 

だが、これが地球誕生から生命の発生、そして進化となるとそうはいかない。
僕の大好きなスティーブン・ジェイ・グールドの『ワンダフルライフ』は、1989年にアメリカで発行され世界中でベストセラーになった。

 

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

ワンダフル・ライフ―バージェス頁岩と生物進化の物語 (ハヤカワ文庫NF)

  • 作者: スティーヴン・ジェイグールド,Stephen Jay Gould,渡辺政隆
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2000/03
  • メディア: 文庫
  • 購入: 15人 クリック: 164回
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内容は「カンブリア爆発」について書かれた本だが、現在判明している事実との相違点は少なくない。当時発見された化石よりも状態のいいものが見つかり、全く違った生態だったことが明らかになったり、当時の仮説が誤っていたことが立証されたりするからだ。
ただし、だからと言って『ワンダフルライフ』が読む価値がないかというとそんなことはない。『ワンダフルライフ』の魅力はバージェス頁岩から出てくる化石たちとその謎を解き明かすために奔走する科学者たちが面白い本なので、未読の人は是非読んでみてもらいたい。

 

話を本書に戻す。
当時の地層や化石から推察することがメインとなる地球や生命の起源については、10年も経つと内容が古くなっていることが往々にしてあり得る。


というわけで、本書はそんなどんどん新しい情報が出てくる全地球史における、最新情報を網羅した本と言える。

 

僕は子供のころから恐竜が好きで、よく恐竜関連の図鑑を買ってもらったり、恐竜博のようなものに連れて行ってもらっていた。
その当時に吸収した簡単な情報でも、本書で改めて「当時そういった情報があった」ということを確認することができ、さらに付け加える形で最新の情報を得ることができる点が素晴らしい。

 

例えば当時、初めて陸上に上がることができた両生類は「イクチオステガ」というサンショウウオみたいな生き物だったというのが本やTV番組から得られる情報だったが、今はティクターリクというより魚としての要素を残しつつ陸上に上がる能力を身に着けた種がいたということが判明している。
こういう、生物たちの進化の肝となる情報だけでなく、それがなぜそうなったのかというのを最新の発見や様々な仮説を用いて解説をしていく。

 

特に本書で重要視されているのが、地球環境における大気の状態。特に酸素濃度の変化についてだ。酸素は生命活動の源であり、恐竜が隆盛を極めていた時代は今とは比べ物にならないくらい酸素濃度が高かった。哺乳類に比べ酸素を取り入れる能力に秀でた恐竜たちは、そのエネルギー効率の良さを武器に巨大な体を維持することに成功し、ジュラ紀から白亜紀にかけて地球上の覇権を握ることに成功したのだ。

 

地球誕生当時はほとんど存在していなかった酸素がなぜ大気中に増えるに至ったのか。酸素濃度が上がることによって地球は「スノーボールアース現象」という、赤道直下まで完全に凍り付く時代を2度も経験しているが、その時代を生命はいかにして乗り越えたのか。そして、そもそも生命はなぜ誕生したのか。「生命は火星で生まれ、地球へやってきた」なんてぶっ飛んだ仮説も紹介されるが、これが実際は仮説のひとつとして決してありえないことでもないということさえ、様々な根拠から紹介される。

 

40億年以上にわたる地球の歴史を網羅した本書。興味のある部分だけを読んでも絶対楽しめると思うので、科学好きの方には是非おすすめしたい。