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【書評】ダメな習慣も悪くないかもしれない『悪癖の科学』

 

悪癖の科学--その隠れた効用をめぐる実験

悪癖の科学--その隠れた効用をめぐる実験

 

 

僕は酒が好きで、次の日が早いとわかっていてもついつい深酒してしまう。次の日早起きしてジョギングしたいと思っていても、ついつい酒の魅力に負けて飲んでしまうことがある。

 

本書は、「性交渉」「酒」「悪態」「危険運転」「恋愛」「スリル」「サボり」「臨死体験」の8つについて、章立てでそれぞれを科学的に分析して、実はいい面もあるんじゃないの?ということを紐解いていく一冊。

 

悪癖で「臨死体験」ってなんだよ!?ってはじめは思ったが、これは幽体離脱やトンネルをくぐるような感覚などの臨死体験を経験した人たちが、死に対してポジティブな感情を持つことさえあるということから、「死」の有意義性を掘り下げたものだ。臨死体験者の中には性格的にも愛情が強くなり、他者を受け入れる気持ちが強くなるなどの変化がもたらされることがあるそうだ。

 

なので、非科学の極みともいうべき「臨死体験」を科学的に分析してきた記録等を披露し、実際に臨死体験が人体にどんな影響をもたらすか、そもそも臨死体験における幽体離脱って本当なの?といったことが詳しく解説されている。心停止状態から回復した人たちへのアンケートや、幽体離脱の解明のために病院の救急治療室の天井にボードを設置する様子などは、こんな科学分野もあったのかと自分自身の認知の狭さを感じさせられるような内容だった。

 

本書で紹介される8つの悪癖のうち、僕がよく犯すものは「酒」と「サボり」の2つだ。
「酒」なんかは昔から適度に飲酒したほうが健康にいい、なんて言われ方をされてきた。実際本書においても、例えば心臓病による死亡者に対する調査では、飲酒の量が極端に多いか少ない人の死亡率が高く、逆に適量を飲酒する人のほうが心臓病での死亡率は低いという科学的なデータが紹介されている。また、適量の飲酒をする人はうつ病を発症するリスクが40パーセント低いというデータすらある。

 

ただし、これらの結果についても「適量の飲酒ができる人は生活が裕福であったり、自制心に優れるなどの恵まれた点があることがおおいので、そもそも飲酒に関係なく健康な生活を送れる環境にあるはずだ」といった冷静な考察もされる。そのうえで、酒には人を魅力的に見せたり、他人とコミュニケーションを取るうえで有益だよ、といった「研究結果」を披露し、様々な視点から「(適量の)酒には有用性がある」という結論付けに導いてくれる。

 

また、僕の大好きな「サボり」についても、何もせずにボヤ~っとする時間の重要性を記している。知能指数を測るテストにおいて、髙い成績を残した人ほど単純な作業に対して退屈だと感じることが多くなるそうだ。つまり、こんなに退屈なことをするくらいならもっと有意義なことに時間を使えと体が訴えていると解釈することもできる。つまらない、面白くないと感じているなら、無理せずにもっと有意義なことをするべきだということだ。無駄と感じる時間も、もっと意味ある行動へ転換するための基礎となってくれているわけだ。

 

酒を飲みすぎれば潰れるし、サボりすぎていては本当に有意義になるものを見失ってしまう。だから悪癖をすべて肯定するわけではなく、適度に摂取することが、バランスよく生きていくコツなんだなと、改めて気づかせてくれた一冊だった。