Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】心の隙間を埋めたいから。『ハリネズミの願い』

 

ハリネズミの願い

ハリネズミの願い

 

 

自宅にお客さんを呼びたいけれど、呼んだらおもてなしの残念さにがっかりされたり、何かしらバカにされて嫌な思いをするんじゃないかと勘繰ってしまい誰も家に呼ぶ決心のつかないハリネズミの話。

 

ハリネズミは延々悩み続ける。うちじゃ狭いんじゃないか、用意しているケーキを気に入らないんじゃないか、そもそもうちに呼ばれて喜んで来る奴なんていやしないんじゃないか。行きたくなかったけど呼ばれたから仕方なく来てやったよ!なんて言われたらどうしよう…

 

そんな極端にネガティブで自意識過剰な思考がグルグル回り、途中途中で現実なのか妄想なの夢なのか幻なのかわからなくなる場面もある。

 

読みながら感じる既視感。この感じは何だ?と思いながら読み進め、ふと「『鬱ごはん』に似てるな…」と感じる。

 

 

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ハリネズミはひたすらネガティブだが、お招きしたいと考えている動物たちも、ハリネズミの中では破天荒なやつらばかりのようで、妄想の中で家を壊されたり、持ち物を勝手に売られたり、用意したケーキをけなされたり…

 

誰かを呼んで、誰かと一緒にいたい。孤独を埋め合わせたい。だけど、それで傷つくのも嫌だ。ああ、わかるよ、わかりすぎるよハリネズミ。だから孤独に妄想を繰り返して、どんどんドツボに落ちていく。そこから一歩を踏み出すことのなんと苦しいことか。

 

孤独が耐えられないわけじゃない、むしろひとりの時間も大切にしたい。だけど、誰かとの繋がりもほしい。そんな痛々しい心の奥を、かわいらしいイラストではっきりと描き出した物語。読んでいて「ああ、うん、そうだね…」と、感じずにいられない人は多いと思う。