Under the roof

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【書評】これは…スタンド攻撃!?『ユービック』

 

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

ユービック (ハヤカワ文庫 SF 314)

 

 

個人的に、ミステリーには2種類のパターンがあると思っている。


ひとつは、初めに大きな謎がドーンと提示されて、それについて主人公たちが徐々に解いていくパターン。


J・P・ホーガン『星を継ぐもの』とかが好き。最初の謎のインパクトが大きいほうが引き込まれやすいし、それが解けていくカタルシスが読んでいて気持ちいい。


もう一つが、後半にどんでん返しが待っているパターン。


殊能将之『ハサミ男』あたりが有名だけど、個人的に好きなのはピエール・ルメートル『その女アレックス』。

 

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

 

 

普通に読ませておいて最後に大きなどんでん返しが…ではなく、途中途中で奇妙な事件や現象が起きて「何だ…これは…!?」と読者を引き込んでおいて、最後にその謎が解けるというパターンが大好きだ。

『その女アレックス』は「何が起きているんだ…?」がものすごく膨らんで、最後のどんでん返しも凄まじかった。未読の方は是非読んでください。

 


前置きが長くなったが、今更読んだフィリップ・K・ディック『ユービック』。古典SFってだけで読む人を選びそうなんだが、中身は素晴らしいミステリーだった。

ちょっと前にあったKindle版のセールで購入し、そのまましばらく積読していた。

寝付けない夜に布団の中でスマホで読み始めたら、あっという間に「な…何が起きているんだ…!?」の世界に引きずり込まれてしまい、一気読み。


『ユービック』は、「何が起こっている!?」にステータスを全振りしているような小説だ。
もともと舞台背景に超能力者たちの争いが存在しているので、このまま超能力者たちによる激しいバトルが始まるのか…と思っていたら、全く別のスケールの謎に飲み込まれてしまう。


ハンターハンターやジョジョで言えば、正体不明の能力による攻撃を受けているような状況。ジョジョだったら完全に「スタンド攻撃だ!」と叫んでいる。最後までワクワクが止まらなかった。
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』と、ハヤカワから出ている短編集しか読んだことはなかったが、フィリップ・K・ディック特有のちょっとB級臭のするSF背景もよい。

 

Kindleでも文庫でも簡単に手に入るので、「何が起きているんだ…?」系のミステリー好きで未読の方は是非。