Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】個人的にツボすぎなので次回作以降も全部読みます『半分世界』

 

半分世界 (創元日本SF叢書)

半分世界 (創元日本SF叢書)

 

 

うわあああ凄い…!マジかこれ完全にツボすぎるだろもうずっと読んでたいよこの作品の感じ…もうこれ次回作以降も絶対全部読んでやるわ…!!

 

って思うくらい個人的にツボでした。最高。

 

と同時に、僕は面白いんだけど、ひとにお勧めするときに紹介方法に困る小説たちだなというのも感じた。

上田岳弘さんの作品のように不可思議すぎて紹介が難しい。

 

紹介文だと一応、SF短編集…なんだが、日常の思考実験のようなテイストなのでハードさはない。どちらかというとカフカみたいな不条理設定を突き詰めて、それを絶妙に面白く日常に落とし込んでいったような…そんな感じ。「筒井康隆っぽい」という評価には納得。

 

短編というより中編の長さのお話が4つ収録されている。

どれも面白いので、紹介文に関してはアマゾンやレビューサイトをご参照いただくとして、4編のうち個人的にツボだった『吉田同盟』について。

 

「吉田大介」という名前の、30代半ば・家庭持ちの所謂「普通のサラリーマン」が、突如何の前触れもなく数万人に「増殖」してしまうという話。

 

増殖してしまったことに対する「ひとりに戻す方法」等での解決はされない。
吉田大介は数万人に増殖したままの状況で、それでもその後の人生をそれぞれが生きていく上で、いかにしてこの不条理な現象を受け入れていくかのプロセスが綿密に描かれる。


ものすごい人数に増えているのに、感じられるのは途方もない孤独感。そのうえで、文化的な素養を持つことが自我を保つ上でいかに重要か…みたいなありきたりともいえる結論を、より深い層にに掘り下げて伝えてくれる。

 

何度も読み返して、自分も吉田大介のように素養を持ち、そしてめちゃくちゃ面白い本書のようなものを常に探せるものになりたいと感じさせてくれた。

 

作者と年齢が近いってのもあるのかな…?4編とも世界観に対するシンパシーが凄かった。非日常にダイブする、っていう読書の醍醐味を存分に楽しませてもらいました。