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【書評】世界は、イメージよりもかなり良くなってます『 FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣』

 

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

FACTFULNESS(ファクトフルネス) 10の思い込みを乗り越え、データを基に世界を正しく見る習慣

  • 作者: ハンス・ロスリング,オーラ・ロスリング,アンナ・ロスリング・ロンランド,上杉周作,関美和
  • 出版社/メーカー: 日経BP社
  • 発売日: 2019/01/11
  • メディア: 単行本
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まず、本書の冒頭で「クイズに答えてみよう」ということで以下のような3択問題が出される。

 

【質問1】
現在、低所得国に暮らす女子の何割が、初等教育を終了するでしょう?

A.20% B.40% C.60%

 

【質問2】

世界で最も多くの人が住んでいるのはどこでしょう?

A.低所得国 B.中所得国 C.高所得国

 

【質問3】
世界の人口のうち、極度の貧困にある人の割合は、過去20年でどう変わったでしょう?

A.約2倍になった B.余り変わっていない C.半分になった

 

こんな感じの、所謂「世界的な社会問題についてのクイズ」が13問ある。

 

驚くべき事に、これらの問題を先進国の人たちに出題したときの(つまり、この本を読むような人たちに対して出題したときの)正解率が、何と10%を下回るらしい。

 

3択問題なんだから、答えをランダムに選択しても正解率は33%になるはずだ。なのに、こういった「貧困や環境破壊などの社会問題に興味のありそうな人たち」に出題すると正解率が軒並み10%を下回る(著者はこれを「チンパンジー以下の正解率」とも言っている)。

 

33%以下の正解率になるということは、様々な社会問題について「知らなくて間違えている」のではなく、「誤った認識を持っているので間違いを選択してしまう」から正答率が低くなる。

著者はこの「誤った認識」について警鐘を鳴らし「もっとちゃんと世界のことを理解しましょう。世界は思ってるより悪くないし、恐れる必要はないよ」という、正しい視線を持つために記したのが本書『FACTFULNESS』だ。

 

日本は災害の多い国で、昨年は特に台風や地震の被害も多かった。
そんな国に住んでいる我々が、
『自然災害で毎年亡くなる人の数は、過去100年でどのくらいになった?』
と聞かれて、感覚的に「半分以下」と答えるのは難しいだろう。世界的に見れば途上国での災害被害も未だに多く感じる。ただそれは、「何が報道されるか」の影響が大きい。

 

一応、頭の片隅では「防災技術や、災害救助のレベルも年々上がっているはず」というのはわかっているが、そういった情報に触れる機会は少ない。「災害によって○○に被害が出た」という報道は頻繁にされるが、「防災技術の発達により今回の台風で被害は出なかった」という報道はまずされないからだ。

 

100年前より世界人口は圧倒的に増えているのに、自然災害によって亡くなる「死亡者数」は半分以下となると、「死亡率」に換算するととんでもない低下にもなる。なのに、なぜか我々は自然災害は年々ひどくなっているような勘違いさえしてしまうのだ。

 

なぜ、間違ったイメージを抱いているか、そして、実際はこんなに世界は昔よりも素晴らしくなっているよ、というのを様々な視点から懇切丁寧に解説してくれる。

 

人は世界実際よりもドラマチックに捉えがちで、既に抱いている先入観を帰るのは難しい。

だからこそ、本書ではまず「一般的にどんなイメージを抱いてしまっているか」を示したあとで、実際は昔に比べれば世界はこんなにも良くなっているんだよ、というのを数値を用いて示してくれる。提示する数値にしても、国連の調査や論文などの数値を引用して隙なく確実な情報を示してくれる。

 

世界を正しく認識するためには、まずは自分の先入観やイメージが間違いだらけだと認めることから始まる。そのうえで正しい数値に興味を持ち、それを受け入れれば世界をもっと正しい目線で見ることができるだろう。

 

というより、今の世界ってこんなに理想的な状況に近付いて行ってるんだな、というのを知るためにも面白く読める一冊。固そうな内容に見えるが、この本こそ先入観を抱かずに軽い気持ちで読み始めてほしい。