Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】むしろこの著者ほど走ることにハマっている人いないと思う『走るやつなんて馬鹿だと思ってた』

 

走る奴なんて馬鹿だと思ってた

走る奴なんて馬鹿だと思ってた

 

 

走ることを続けるのは、とても難しい。
僕はもうラン歴3年以上になるけれど、どちらかというとイヤイヤ続けている。小さい子どもがいると自由時間を確保すること自体が難しいし、いざ時間ができたとしてもウエアに着替えて走り出すのが億劫だ。天候や体調に左右されることもあるので、一度モチベーションを失うとそこから回復させるのは結構大変だったりする。

ただそれでも走ることをなんとか完全に辞めずに続けられているのは、運動はしなきゃダメという個人的な強迫観念と、その運動を「ひとりでも気軽にできる」のはランニングしかないからという二つの理由による。ぶっちゃけ時間と金銭的な融通が利いて、しかも日常的にスポーツできる仲間も確保できるなら、自分は絶対ランニング以外を選ぶ。テニスとかバドミントンの方が好きだ。野球やサッカーはあんまりだけど。
ひとりでできるスポーツなら水泳があるが、これもプールまで行って着替えてと時間がかなり必要なのでたまにしかできない。時間さえあれば泳ぐ方が性に合っているので水泳メインにしたいんだが。

話がいろいろ逸れたが、本書は走ることどころか運動嫌いだった著者が、45歳を超えたところから急にランニングにハマり、最後はフルマラソンまで結構いいペースで走ってしまうという個人の経験を綴ったエッセイだ。

ランニング関連の本を手に取る理由って、当然ランニング自体に興味がある、これから始めてみようかなという人が手に取ることが多いだろう。ただ、それだけでなく、今ランニングをしている人にとっても、モチベーション向上という意味合いでこういった本を読む人もいると思う。自分もそうだからだ。
そういう意味では、本書は初心者から上級者まで、そしてこれからランニングを始めようと思ってる人なんかにもオススメできる、「ランニングのモチベーションが生まれて、しかもとても面白い本」だ。

超初心者だった著者がランニングにはまっていく様子はまあ「当たり前」として、「走ること自体よりも走ったあとにランアプリの記録を眺めながらニヤニヤするのが好き」とか、「毎日同じコースを走るのではなく、ネットで事前に距離を測って毎回違うコースを走ってみる」などといった「いかに楽しみを見つけるか」という点が細かく書かれているのがいい。
また、走りまくった結果、最初は体重が落ちたが、ある程度以降は変わらなかった話や、走り過ぎてケガをした話など、ネガティブな側面をただ事実として面白く描いてくれている点も素晴らしい。そういったネガティブな面を経験しつつも、それでも著者は走り続けている、走り続ける人もいるんだ、という事実が読者のモチベーション向上に繋がるからだ。

むしろ本書の著者は、走ることにハマりすぎて足を故障したからしばらく休養しなければならない状況でもすぐに無理してしまったり、天候が悪い時でも隙をみては走ろうとしたり、とにかくランニングコースを見つけることに魂を燃やしたりと、頭の中の半分以上ランニングに占められてるんじゃないかと思えるくらいのどハマりに見えた。これだけハマれるのは逆に才能ありまくりの羨ましい状況に思える。

ランニングが趣味で、フルマラソンの大会にも毎年参加して、となってくると次の目標は「フルマラソンでの目標タイム切り」になってくるのが一般的だろう。僕も今は、フルマラソンでの4時間半切りが目標で走っている。
ただ、本書を読むと、そんな無理して自分をよくしようと、タイム上げるために無理くり頑張る必要もないのかなと思えてくる。楽しむことこそが第一で、それを見失ったら走ること自体も嫌いになってしまいそうだからだ。だからこそ、本書のような「ランニングを楽しんでいます」感満載のエッセイは、読んでいる僕にとっての最高のモチベーション向上剤になってくれた。