- 作者: 藤井太洋
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2014/02/21
- メディア: Kindle版
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本書もまた、現実的であり、ワクワクする内容。宇宙開発技術を用いたテロを巡る、国際政治を絡めた様々な思惑の交錯するストーリー。
主人公は、所謂フリーランスのプログラマー。「デブリ」と呼ばれる宇宙ゴミの位置情報を掴み、それが大気圏に突入する予測を立てて、流れ星がいつどこで発生するかを提供するサービスを運営している。このサービス自体が面白そう。そんな主人公は渋谷駅直結のコワーキングスペースで同じくフリーランサーたちと仕事をしている。これからどんどん増えていきそうな生き方。
場面はどんどん飛ぶが、すべてが同時進行で一本の軸を中心に展開するので、ストーリーの中にはどんどん引き込まれていく。
ただ、賛否が分かれそうなのが、登場人物、特に主人公側が有能すぎるというところ。こんなに強くて有能な主人公は神保真一の「ホワイトアウト」か伊坂幸太郎「マリアビートル」以来の経験。主人公のわきを固める人物にも有能なやつがたくさんいて、CIAとかが霞むレベル。そのくせ突然感情任せに無謀な行動なんかもしでかして、何だか主人公チームにはちょっと感情移入はできなかった。
せっかく物語の核となる素晴らしい技術が、凄すぎる登場人物に押し負けている印象。国際テロが基盤にあるのに、ストーリーの進行も驚くほどクリーンで、このクリーンさも、主人公チームが有能すぎるために引き起こされている。ちょっと凄すぎるよ主人公チーム。まあ、こういう主人公無双小説として読んでも面白いとは思うけど。
技術の凄さによる展開引き込まれる感じは素晴らしい。ストーリーとキャラの強さに魅力を感じる人ならグイグイ引き込まれると思う。