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【書評】カモフラージュ率100%『自然のだまし絵 昆虫の擬態』

自然のだまし絵 昆虫の擬態: 進化が生んだ驚異の姿

自然のだまし絵 昆虫の擬態: 進化が生んだ驚異の姿


このなかにある生き物が隠れています。さてどこでしょう?
というテロップのもとに画面が数秒写し出され、「正解はこちら」のセリフともに潜んでいた生き物がクローズアップされて正体を暴かれる。
そんなシーンに出てくるのは、だいたいが昆虫、僕のイメージではハナカマキリが多い。

本書はそういった「昆虫の擬態」に焦点を当てた写真集だ。小学生向けの教材なんかでも、どこにいるかな?みたいな表記とともに自然の中に擬態している昆虫の写真を目にすることがある。言うなればあれの大人用。

擬態なので、カモフラージュにより周囲の景色に溶け込んでいる写真がメイン。その方法は多種多様で、木の葉や枝や幹に化けるもの、地面に溶け込むもの、などのほかにも、毒のある虫に自分の体を似せることにより身を守るといった、あえて目立つことによりハッタリをかまして身を守る昆虫など、その擬態の方法は多岐にわたる。

本書の凄さを感じるには、実際に本書の写真を見てみることを強くおすすめする。
なにせ、本当にどこにいるか確信の持てない写真があるからだ。多分これ、っていう輪郭は見て取れるが、どこが目でどこが足でどこからどこまでが腹部なのかというのは正直わからない。
ほかに目を引くのは、「ムラサキシャチホコ」という蛾の擬態。一見すると丸まった落ち葉に見えるのだが、実際はムラサキシャチホコの翅で、飛ぶための翅なので全く丸まっていない。丸まったように濃淡と陰影で見せているだけで、この「丸まった落ち葉の感じ」は普通にスケッチで再現しようとするのさえ難しいレベルの出来栄え。気になる人は「ムラサキシャチホコ」で画像検索してみるといい。きっと驚くから。

なんでこんなに落ち葉や木の枝に似ている昆虫がいるんだろうというのを考えると、やっぱりダーウインの進化論というのは正しいものなんだなと強く感じられる。
ダーウインの進化論は「突然変異」と「自然淘汰」によって起きる。
丸まった落ち葉に見える蛾が突然変異で生まれ、それが天敵に見つかりにくかったため結果的に生き残っていったのがムラサキシャチホコであり、それ以外の存在している擬態する昆虫たちも同様なわけだ。まあ、ムラサキシャチホコの場合は「なんでここまで似たのか」はうまく説明できないが、それでも突然変異というのは進化を語るうえで重要な手がかりになる。
大型昆虫、鳥、小型哺乳類と天敵の多い昆虫にとって、生き残るための戦略として擬態というのはとても優位に働く。昆虫はその「数の多さ」と「ライフサイクルの速さ」を武器に繁栄してきたのだ。

本書は自然写真家である著者が45年にわたり撮りためた擬態写真の集大成。擬態の教材写真としても、昆虫好きが眺めるための本としても最高の一冊。