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【書評】我々は「ありえない」存在だ!『ありえない138億年史』

 

ありえない138億年史

ありえない138億年史

 

地球の歴史をよく「46億年」と表現しているのを目にする。現在、人類が繁栄しているのは様々な条件が整うことによって(偶然に)地球上に生まれた生命が、少しずつ進化を繰り返してきたことにより人類が誕生したからであり、その土台となる地球、ひいては太陽系の誕生が今から約46億年前(50億年前という言い方もよくする)だということに深い関わりがある。


だが、本書の歴史は「138億年史」だ。46億年からすると約3倍の時間。この138億年前というのは、ビックバンにより宇宙が誕生した時のことをいう。


生命誕生を偶然や奇跡の連続と言うことがあるが、そもそもの宇宙誕生、そしてその数億年後に最初の星が生まれたことも、とんでもない偶然と奇跡の結果といえる。


宇宙誕生、星が生まれ、銀河が作られ、太陽系、地球が誕生し、そこにさらに偶然が重なって生命が生まれ…


宇宙は様々な偶然の連続で今に繋がっている。地球上に生命が誕生した、という事実も大変な偶然の連続だが、その生命を生み出した地球自体がとんでもない偶然の上に作られている。


例えば、地球の主成分。地球の主成分は酸素、マグネシウム、ケイ素、鉄の四つの元素であり、これらは実は太陽系においては希少な元素であった。


しかし、これらの希少元素こそが地球特有の大気や地殻を作り出す要因となり、さらには生物の進化、そして人類が道具を用いて文明を築く重要な役割を果たすこととなる。

 

特にケイ素(岩石のもと)は、本来地表近くにはあまり存在しない物質だったが、プレートテクトニクス(大陸の大移動)などにより地表へと送り出され、人類が「石器」を作り出すという大きな影響を及ぼすこととなる。


本書を読むと、宇宙の歴史は偶然の連続のみで現在に至っており、様々な『別の宇宙』があり得た可能性も読み取ることができる。今こうして138億年前の宇宙について、科学という武器をもとに読み取ろうとしている我々は、まさに「ありえない」偶然の連続で生まれたものたちなのだということを噛みしめることができる。