Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

2018年上半期に読んだ本のベスト

もう2018年半分終わるのか…


ついこの間息子にクリスマスプレゼント渡したばかりの気がするし、4月に子どもたち3人とも保育園で進級したから既に新しいクラスになって3か月たつのに、いまだに前のクラスに連れて行きそうになるしで、いまだに体が2018年に慣れてない。


ただ、個人的に半年に一度のルーティーンとして上半期下半期それぞれで読んだ本のおススメをまとめることにしているので、今回も少ないながらフィクション、ノンフィクションそれぞれを3冊ずつ、印象に残った本たちを紹介したい。


まずはフィクション


◆Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape

 

2026年、京都。テロや略奪行為ではなく、「人がそれぞれお互いに殺し合う」という謎の暴動が起こる。「Kyoto Riot」と名付けられたその暴動は、SNSを通じて全世界に拡散され、「ウイルスだ!」「ゾンビだ!」などといった様々なパニックを引き起こす。


しかしその暴動は、霊長類研究施設から逃げ出した1匹のチンパンジーが原因だった…


ストーリーの疾走感、暴動シーンの激しさ、取り扱われる題材がいかにも映画っぽい。映像が目に浮かぶよう。


暴動を止めようと奔走する主人公たちのアクションシーンも素晴らしいが、本書の面白さは実際の霊長類研究をもとにした科学的なバックグラウンドだ。人類とは、霊長類とは、サルとは、動物とは…と、様々な知見を広げてくれる。


エンタメと科学の融合として素晴らしい小説。映画化されないかな…

 

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◆ゲームの王国

ゲームの王国 上

ゲームの王国 上

 
ゲームの王国 下

ゲームの王国 下

 

これは凄い。なかなか出会えないレベルの小説。


舞台はカンボジア。上巻は、ポル・ポト派の時代を生き抜く様子を、パニックとホラーとサバイバルとさらには能力バトルまでも混ぜ込んだ超濃密な内容。


で、下巻は急にSF。政治と脳波とゲームとが複雑に絡み合って…と、上巻下巻でこれだけのネタをぶち込んで、めちゃくちゃ面白く仕上げられたとんでもない小説。


とりあえず「ゲームの王国 書評」とかで検索して、ちょっとでも面白そうと感じたら読んでみてください。ただただ面白い世界へと飛び込ませてくれます。

 

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◆折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

折りたたみ北京 現代中国SFアンソロジー (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ 5036)

  • 作者: 郝景芳,ケンリュウ,牧野千穂,中原尚哉,大谷真弓,鳴庭真人,古沢嘉通
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2018/02/20
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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『紙の動物園』『母の記憶に』の両方がとんでもなく面白かったケン・リュウが選出した、中国人作家たちのSF短編集。で、これもまた全作品ハズレなしの最高の短編集だった。


近代化、IT化の進む中国ならではなのか、「この人たちどんだけ未来を見ているんだよ!」という作品が多いと感じた。イーガンみたいなハードな世界の未来ではなく、現代の延長としての未来の視点。ただし、中国ならではのディストピア感あふれるものがふんだんにあって、中国人SF作家はここまで表現できるのか…と妙な感動を覚えるものも多い。


現在進行形で発展し続ける中国を感じるためにも、今読んでほしい短編集だ。

 

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続いて、ノンフィクション部門

 

◆ブラックホールをのぞいてみたら

ブラックホールをのぞいてみたら

ブラックホールをのぞいてみたら

 

ブラックホールっていいよね。知りたくなる宇宙の謎トップだと思う。本書はそんなブラックホールの入門書にうってつけの一冊。


冒頭から特異点と事象の地平面という言葉を駆使してブラックホールの性質について説明され、解説図もついているためすんなりと形としてのブラックホールのイメージが頭の中に入ってくる。


で、2016年2月に「重力波」が検出されたことにより一般相対性理論の正しさとブラックホールの存在が確かなものとなったことが報道されたが、じゃあ重力波って何?っていうことも複雑な計算式などを用いずに説明され、結果それがなぜブラックホールの証明となるかまでが筋道どおりに理解できる。


素晴らしい。宇宙には面白い謎が溢れている。それらを知りたくなるとっかかりとしても最高の一冊。

 

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◆黙殺 報じられない"無頼系独立候補"たちの戦い

黙殺 報じられない“無頼系独立候補

黙殺 報じられない“無頼系独立候補"たちの戦い

 

一見すると本書は、マック赤坂に代表される『選挙に出てくる主要でない候補者』(本書では"無頼系独立候補"という呼び方をしている)について、面白おかしく書かれた読み物なのかな…なんて軽い気持ちで手に取ったら、とんでもなかった。


本書が見せてくれるのは、「選挙とは何か?我々は選挙を勘違いしていないか?」だ。選挙とは「当選して議員になる」のが目標であるかのように見せられるが、実際は選挙こそが政治家の本質である政策をフルにアピールするための場なのだ。有名候補を追いかける選挙戦を見るのではなく、この候補者はどんな政策を実現しようとしているのかを我々が選ぶことができる場、というのが選挙の当たり前の本質だ。それを知っているはずなのに、一般的な選挙報道の見せ方によって我々は忘れてしまっている。


本書を読めば、正しい方法で選挙を見て行こうという気持ちにさせてくれるはずだ。そして、無頼系独立候補に対して今までと違った目を向けてみようという気持ちにもなるはずだ。

 

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◆太陽系観光読本:おすすめスポット&知っておきたいサイエンス

太陽系観光旅行読本:おすすめスポット&知っておきたいサイエンス

太陽系観光旅行読本:おすすめスポット&知っておきたいサイエンス

  • 作者: オリヴィア・コスキー,ジェイナ・グルセヴィッチ,露久保由美子
  • 出版社/メーカー: 原書房
  • 発売日: 2018/02/27
  • メディア: 単行本
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水金火木土天海(冥)の太陽系の惑星それぞれの「旅行するとしたらどんな方法で、そしてその惑星はどんな環境で、どんな観光名所がありますよ」という、とてもとても前衛的な本。


惑星ごとのアクティビティと称して、例えば低重力下の惑星なら翼を装備して自力で飛んでみましょうとか、観光名所なる大きなクレーター(どれもこれもちゃんと名称がある)を巡ってみましょうなど、「地球の歩き方」的な観光読本らしさから、「土星の輪からじかに手に入れた氷で宇宙カクテルのロックを堪能しましょう!」というマジでありそうだしなんならそれ本当に飲みたいわっていうおススメ案内まであってとにかく面白い。


読後はもう、土星観光→土星の輪で宇宙カクテル堪能→土星の衛星タイタンでアクティビティという旅行など、さまざまな太陽系観光プランを夢想してしまった。


美しい写真が多く掲載されており、面白くて、しっかりした科学的知見も広がる。宇宙に興味がおありなら、ぜひ手に取っていただきたい一冊。

 

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◆◆◆◆


というわけで、以上が2018年上半期に読んだフィクション・ノンフィクションそれぞれのベスト。


宇宙とかSFとか、科学的な面白さを感じる本を多く読んだけど、そんな中でも『黙殺』は「知っているべきことをしっかり認識させてくれた」という点で、この本を読んでよかったと強く感じさせてくれる一冊だった。個人的上半期ベストワンだ。

 

以下、過去のベスト

 

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