Under the roof

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【書評】うわっ…この人のサメ好き、ヤバすぎ…?『ほぼ命がけサメ図鑑』

 

ほぼ命がけサメ図鑑

ほぼ命がけサメ図鑑

 

 

前回読んだ、【書評】ドM科学者の異常な愛情『蜂と蟻に刺されてみた』 - Under the roof に続き、また読んでしまった「生物学者の異常な愛情」シリーズ。今度はサメ。

 

確かにサメは魅力的で面白い生きものだ。
我が茨城県にはサメの展示数日本一を誇る「アクアワールド大洗水族館」があり、巨大水槽で泳ぐサメたちを見るのは本当に素晴らしい。子どもを連れて行ったのに、大人のほうが夢中になって眺めてしまう魅力がある。


で、本書はサメ好きが過ぎて自らを「シャークジャーナリスト」と名乗る著者による、丸々一冊サメについて書かれた本。


生物としてのサメの解説だけではない。「ジャーナリスト」らしい日本や海外の海で実際に潜って調査したサメの生態や、漁師さん経由で手に入れたサメのサンプルを使って得られた研究結果などを、エッセイのような軽いタッチで読ませてくれる。

言わば「著者のサメ愛を存分に語る本」になっている。


特に本書前半に書かれる、サメの生態についての解説が読みやすくて面白い。

 

「サメは魚なのに卵生ではなく胎生である」とか、「サメには『ロレンチーニ器官』という特別な感覚器官があり、それで獲物を探せる」といった、サメの基本的スペックながら意外とみんな知らなさそうなところを詳しく解説し、しかも読みやすくて退屈でない。

 

この辺りを読んだ時点で、みんなサメの魅力に取りつかれるのは間違いない。著者のサメ愛が細かいところに感じられて、自分も次にサメを見るとき注意深く観察してみようという気にさせてくれる。


ただ、サメ愛が強すぎるのか「ちょっとそれは…」というところも結構ある。

例えば第1章の『「人食いザメ」ってどこにいるんですか?』において、

 

「人食いザメ」というイメージは、私たち人間がサメに対して勝手に抱いている誤解です。彼らが好んで人を食べるなんてことはありえません。
アメリカ人の死因を調べた統計調査によれば、1959年から2010年までの約50年のあいだで、サメに襲われて死亡した人は26人。年間平均で0.5人ほどにしかなりません。ちなみに同じ期間に落雷が原因で亡くなった人は1970人。年間平均で37.9人です。サメに襲われて死ぬ確率は、雷に撃たれて死ぬよりもはるかに低いのです。


いやいや、サメに襲われて「死亡」した人は確かに少ないかもしれないけど、「噛まれて手や足に大けがを負った」だったらとんでもない人数かもしれないじゃないですか…?

しかも比較対象が「落雷」って…あんまりピンと来ないし、サメと違って落雷にあったらほぼ死ぬでしょ…けがで済むかもしれないサメとの比較対象としてどうなのよ…


と、これって著者がサメ好きすぎて過剰にサメを擁護してない?って感じる部分が結構ある。
研究対象に愛情ありすぎて、擁護したいあまりに考えが突飛になりすぎてない?という感じ。違う意味でヤバい。


そういったツッコミどころは各所にあるけれど、総じて読みやすくて面白く、知見も広がる。

逆にそういう過剰擁護かなと感じる部分には、「サメのこういう生態は、マジで危険なんじゃないか…?」とツッコミを入れつつ読むのもいいかもしれない。


読んだ後はきっと、水族館でサメを探してじっくり見てしまうことになるだろう。