Under the roof

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【書評】魚にもやさしくなりたい。『魚たちの愛すべき知的生活』

 

魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう行動するか

魚たちの愛すべき知的生活―何を感じ、何を考え、どう行動するか

 

 

「食べられる?」「おいしそう」「かわいい」「珍しい」「気持ち悪い」くらいのレベルでしか見ていなかった魚たちが、多様で色とりどりの世界を持つ愛しい生き物に見えるようになった。

 

漁業のことを「資源略奪型漁業」という言い方をすることがある。養殖の魚などもいるが、漁業の多くは天然の資源である魚を捕ることが多い。


もちろん資源が枯渇しないよう、漁の期間が設けられていたり、禁漁区が定められていたりと管理をされる部分もあるが、基本的に「魚」といえば天然のものを、その場でガンガン捕るものというイメージが強い。


網で船や港にドバーッと水揚げされている様子を見て、ああ、こういう風に魚は捕られて食料として流通してくるんだなと。


要するに、自分にとって魚は「いくら捕っても大丈夫」な、「ありふれた食べ物のひとつ」くらいのイメージだった。それ以外は水族館やペットショップにいいる「観賞用」のきれいな魚くらいで、「食べられるか、見るか」の対象でしかない。

 

しかし、実際は魚だって知的で感情的で社会的な生活を営む生物なんだよ、と科学的に踏み込みつつ面白く解説してくれるのが本書だ。

 

普段は食べるだけの魚だって、まずは「痛みを感じる」というだけでああ、そらそうだよねと魚を思い浮かべながら感じる。


その根拠について、今までは魚には大脳新皮質がないため「魚は痛みを感じない」とされてきたが、鳥にも大脳新皮質がない点や観察実験による魚たちの行動分析により様々な魚の感情が説明できるようになってきたことを面白くわかりやすく解説してくれる。

 

読めば、魚たちの世界は「ただの水の中」ではなく、それぞれの世界をそれぞれの感覚で生きていることが理解できるはずだ。むしろすむ環境によって視力、聴力、嗅覚を独自に発展させ、果ては自分の性別さえコントロールして子孫を残している魚もいる。

 

面白さや哀愁のある魚たちの生活を見れば、ただ船や港にドバーッと水揚げされるだけが我々の関わりではない、むしろ愛しい目線で見るべき存在だと言うことを感じさせてくれる一冊だった。