いい。すごくいい。
エッセイ集として面白くて、未知の世界に触れられて、知見も広がる。以前読んだ『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ』もそうだったんだが、こういう本をもっと読みたいんだよ。
「ゲテモノを食べる」って、テレビのバラエティでも目にするネタで、だいたいお笑い芸人とかがイヤイヤ食べてる様子を笑うってパターンだと思う。
が、本書は自称「胃腸の弱い」著者が、世界中を飛び回る仕事において「現地だけで食べられているような珍しいもの」を積極的に食べるという、むしろとても文化風土的なものを学べる素晴らしい本になっている。
で、まず第1章「アフリカ」で最初のエピソードが「ゴリラを食べた」
いやいやいや、なんかもうこれだけでこの本優勝でしょう。まずサルはポピュラーな食べ物とか言っちゃってるし、なんかもう冒頭から手加減なし。
そんなインパクト食材以外にも、読んでいてへえーとなるものもたくさん。
例えばソマリアで飲んだラクダ乳。
ソマリアではラクダの乳はとてもポピュラーな飲み物らしい。常温で木の桶に入れたまま保管して、酸っぱくなったラクダ乳を飲むのがソマリア流だそうだ。
何と、ソマリ語には「アブ(飲む)」という動詞とは別に「ダミ(ラクダ乳を飲む)」という専門の動詞があるらしい。おそらく今後全く役に立たない知識ではありそうだが、でもこういうのがたまらなく面白い。
さらには東南アジア編では首狩り族まで出てくる。いや今時首狩り族って…なんてオカルトネタを見るような目で見てはいけない。
何と実際に首を狩った経験のある、マジモンの首狩り族が出てくる。「昔はもめ事があったら首を狩ったもんだ…」みたいなこと言ってて、著者が偏狭でゲテモノ食べてることなんてどうでもよくなるくらいのインパクト。すごい。世界は広いよ。
それ以外に出てくる料理も、それに付随したエピソードも期待を裏切らないインパクトあるものばかり。
虫とか爬虫類とか脳みそとかは序の口。なにせ第1章の最初で食べたものがゴリラだから。いろんな意味でダメというか、でも多分これから経験することはできないから、「ゴリラを食べた経験を読める」というだけでもかなり貴重。
それ以外にもまるでゴムホースみたいな水牛の脊髄とか、「水牛の髄液胃袋包みかりかりあげ」と著者が名付けた、もはやどうやって編み出したんだその料理みたいなのとか、とにかく出てくる料理のラインナップも多くて全く飽きない。
いろんな意味で世界の広さを感じられ、読書の喜びを感じられる素晴らしい一冊。世の中に面白いことはこんなに溢れている。