Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】素晴らしい主人公の成長物語『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

 

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

 

 

これは凄く面白かった。
著者はイギリスのブライトン市在住。既にイギリスで20年ほど暮らし、アイルランド出身の配偶者との間には中学生になる息子さんがいる。

本書の主人公はこの中学生になる息子君で、私立のカトリック系学校という所謂トップクラスの優秀校で小学生時代を過ごした息子君が、中学校は打って変わって公立の「元底辺高(以前はかなり荒れていたが、今は学校側の努力により改善されつつある公立校)」に通い始め、そこで目にした多様性や貧困やレイシズムの現実と、それにぶち当たりながらも成長していく様子について、母親である著者が日記形式で記したノンフィクションだ。

本書を読むと、まずは誰もが息子君の人物としての素晴らしさに惹かれることだろう。いじめっ子、いじめられっ子、お金持ち、貧困、人種、そういったことにとらわれず、常にフラットな視点で物事に取り組み、気付けば周囲もハッピーになっている。

息子君はどんな状況でも「らしさ」を失わずに、優しく相手のことを尊重した行動を取り、逆に差別的な発言をするような同級生にはそれを見過ごすことなく注意も出来る。ただ穏やかなだけでなく、芯の通った優しさがあり、行動に浅はかさもない。
常に相手を慮った行動を取れる息子くんの言動などに、いい大人な自分の方がハッとさせれられてしまう。

「子育てに正解はない」ってよく聞く文言だが、こんな頼もしい息子が育ったら自分なら絶対100%の成功だって言っちゃいそう。
てかむしろこの息子君ほど物事をフラットに見る目線が自分にあるかと言われると自信がない。
自分自身の子どもたちとの触れ合い方だと、こんな風に頼もしい子どもは育たないんじゃないかと反省しきり。

自分の子どもとの触れ合い方を反省しつつ、さらに自分自身が中学生だった頃こんな風にすべての友達に偏見なく手を差し伸べられる存在だったかも顧みてしまう。

子育てに正解はなく、失敗もない。だが、こんな人物に育ってくれたらな、自分だってこんな人間になりたいな、と思えるような理想は誰にでもあるだろう。
本書の息子くんは、そんな風に想像したり諦めたりする理想に近く映る。
僕にとっては育児本のように読んでしまったが、子供達の目線で見れば、大きく変化しつつある世界で自分らしく行きていくための姿を捉えた一冊とも言える。今はどこに行くにも一緒に行動してる我が子たちも、中学生にもなれば親は邪険されることだろう。そんなとき、安心して送り出せるように、僕らが力を尽くすべきこともまだまだあるんじゃないかと思えた。