Under the roof

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【書評】ノー残業デーは、こっそり残業する日です!『 測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』

 

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?

 

 

「仕事の成果を数値で評価する」のはごくごく普通のことだ。幸い僕はさほどノルマに縛られない仕事をしている。なので、結果ばかりを気にするのではなく、目の前の仕事を確実にこなすことに集中できている。
しかし、世の中には数値という結果を求めるあまり、その目的を見失うことが往々にしてある。そのことについて解説したのが本書だ。結果の数値を求めてくるのは、我々の上司である管理職、そして経営者やその上の調査機関などだ。売り上げを増やせ、残業は減らせ、クレームは減らせ。内容に興味の無い管理職は、ただ取り組んだ結果の数値を求めてくることが往々にしてある。そういった、目的を見失って数値ばかり求めることに対して、本書は様々な事例をもとに警鐘を鳴らす。

一般的なサラリーマンにとっては、「まさにソレだよ!よく言ってくれた!」って思わずにはいられない、身に覚えのある話ばかりだ。

何年か前に、ウチの職場でもノー残業デーが設定された。ノー残業デーでは、原則残業禁止。どうしても残業したいなら、前もって管理職に残業する業務の内容と残業に必要な時間を申告し、決裁を受けなければならない。但し、別日に回しても問題ないような仕事であれば、決裁はもらえない。
これによって、ノー残業デーでは残業時間が0に近くなった。目的は達したわけだ。だが、結局別日の残業が増えたり、ノー残業デーでも管理職たちが帰った後で、こっそり残業する人が増えただけだった。もちろんノー残業デーでの無断残業なので、残業代は出ない。
ノー残業デーが設定されたことにより、その日の業務が重くならないように気を使ったり、別日に残業せざるを得ないのでプライベートの予定を変更したりと、働く側としては余計なストレスを抱え込むことにもなった。
そもそも残業は毎日ないのが理想であって、残業ばかりしている人や部署があったらそれを個別に改善すべきだ。いくら業務を減らしても残業というか職場にいるのが好きなやつもいるが、そんなやつにこそ個別指導をするなり評価に反映するなりすればいい(個人的な愚痴でスイマセン。でもそういう、残業代食い潰すことが好きなやつってどこにもいて、きちんと業務時間内に仕事をこなす側からすれば害にしか見えないので)。
しかし、全体での残業ゼロという結果のみにこだわるが故に、実態にそぐわない無理のある業務体制ができあがってしまった。働く側にとってのメリットがほとんど無い。

残業時間を減らしたいという目的を見失い、残業は0だったという結果を求めることに目標がすり替わってしまっている。
成果を評価するには、データ化された数値が最も扱いやすい。だが、数値による結果のみを求めれば、そこに起こりえるのは数値の改竄だ。本書は警察、学校、医療機関等で起こった実際の数値改竄による結果のごまかしについていくつもの例を示し、測定がメインに置き換わることによる仕事本来の目的を見失うことの危険について解説する。犯罪率の低下を目指せば、軽微な犯罪を計上しなくなり、いじめ0を目指せば、実際に起きたいじめを無かったことにする。そうすれば数字上の結果は担保され、偉い人は納得する。しわ寄せは、数字を作ることに集中させられる現場にはね返ってくる。はいはい。自分も散々「こんな数値出して何に使うの?」ってものを作らされたので、嫌というほどわかります。

もちろん、きちんと結果に繋がるものを測定することは重要だ。ノー残業デーに囚われず、性格に残業を報告し、残業時間が増えているなら人員を増やす、業務内容を改善する、と生かすことができる環境こそが理想。そしてそれはどこでも絵に描いた餅になってしまっている。
実態は業務内容も人員も変えず、ただ残業を減らせ、個人で工夫しろと、管理能力のない管理職に振り回されることがほとんどだ。
だからこそ、本書を読むことにより、本来の目的にそぐわない、無駄な測定をしないという意識付けをしていくことの重要性を再認識できる。