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Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評※虫注意】まるで装飾品のカタログ『きらめく甲虫』

読書

きらめく甲虫

きらめく甲虫



表紙に惹かれて、図書館で借りた。虫苦手な人はゴメンナサイ。

僕は虫全般が好きだ。ゴキブリとかカマドウマとか一部触りたくない虫もいるが、それ以外ならだいたい好き。

本書は、「甲虫」という、体全体が硬い殻で覆われている昆虫のきらびやかな姿そのものに焦点を当てた、写真集だ。

昆虫は体の部位を「頭」「胸」「腹」の3部分に分かれ、「頭」には目、口、触角などが、「胸」には3対計6本の足があるのが原則となる。足が8本あるクモは昆虫ではないし、ムカデやダンゴムシも昆虫ではない。
また、昆虫には普通「羽」がある。「羽」は基本的に2対4枚からなっていて、トンボなんかは4枚あるのでわかりやすい。蝶や蛾は上部に大きな羽、下部に小さな羽とそれぞれ独立して考えるので、2対で4枚になる。蠅や蜂なんかは4枚のうち2枚は退化して小さくなったりなくなったりしているので、見かけ上は2枚だが実際はやはり4枚あるものと考えられる。
そして、甲虫は2対4枚のうち、外側に位置する「前翅」の1対の羽が硬くなり体の外郭を覆うようになった。「腹」部分の背中側を覆っている硬い外郭は羽であり、その中にもう1対の羽が折りたたむようにして収納されている。テントウムシなどは外側の羽、「前翅」を開き、中の「後翅」を羽ばたかせて飛ぶ。

この「前翅」を含めた背面の甲殻が、体を守るように発達しまるで甲冑に身を守られているように見えるのが「甲虫」だ。代表的なものにカブトムシやコガネムシ、テントウムシ、カミキリムシなどがいる。

カブトムシのように茶色いだけのボディーをした者もいれば、テントウムシのように前翅にきれいな模様が描かれたものもいる。
また、ホログラムのように前翅を含めた背面全体が光を反射して輝く甲虫もいる。有名なのが日本にもいる「玉虫」
「玉虫色の輝き」なんて表現もあるように、光の当たり方によって輝きの色合いが異なって見えるのが特徴。

僕も玉虫を生で見たことあるのは数回。生きているのを見たのは多分1回だけだったと思う。

玉虫の美しさは、国宝「玉虫厨子」にも表れるように死後も変わることはない。

前置きが長くなったが、本書で観られる虫は玉虫をはじめとした、金属のような光沢を持つ甲虫たち。

コガネムシ、オサムシ、カミキリムシ、ゾウムシ…日本には金属光沢のない、地味な種類しか生息していないが、世界を見渡すと様々な「きらめく甲虫」が存在する。

特に度肝を抜かれたのが、冒頭に登場する「きらめくコガネムシ」たち。
コガネムシは、日本ではフンコロガシとしても有名で、よく牧場で家畜の糞を丸めている姿を目にする。
ただ、コガネムシは全てがフンコロガシなわけではなく、花粉や樹液を餌に生きる種もあるので、その生態は多様だ。

ただ、共通しているのが、ずんぐりとした丸みを帯びたボディ。古代エジプトでは「スカラベ」と呼ばれ、再生や復活の象徴である聖なる虫として石を用いて印象などが作られた。
ひょろ長いカミキリムシやオサムシなどと違い、丸っこい形は可愛らしく、親しみやすい印象を受ける。

中南米の標高の高い地域には、表紙の右端に載っているコガネムシのような「白金色」に輝く種も存在する。写真で見るだけでも圧巻の美しさ。「ただの虫」のはずなのに、貴金属で作られた装飾品のように見える。
実際、これらの美しいコガネムシは非常に貴重な種で、高値で取引されることがあり、なんと重さの単価で言えばグラムあたり本物の金よりも高く取引されるそうだ。

白金色に輝くコガネムシが美しさの極みなら、まだら模様に輝くオサムシという、「禍々しさ」の象徴とも言える甲虫も本書では見ることができる。
これも、写真だけで圧倒的な存在感。伝統工芸を究極に悪趣味な方向へ進化させたような、美しさと嫌悪感が絶妙に絡み合う、大自然の妙を味わうことができる。

写真だけでなく、きらめく甲虫たちのエッセイのような読み応えある解説も本書の魅力。
繰り返すが、虫がダメな人はゴメンナサイ。ただ、大丈夫な人や少しでも興味を持てる人には強くオススメしたい。

宝石のような、魅惑の輝きを存分に堪能することができる1冊。