Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】支援したくないような相手だからこそ、支援しなければならないという事実『どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2』

 

『ケーキの切れない非行少年たち』の続編。前作はかなり話題になっていたので、このブログでも感想を書いた。

tojikoji.hatenablog.com

 

前作はタイトルがまずセンセーショナルだったので、それで手に取った人も多いと思う。

「ケーキを三等分する」ことをうまく飲み込めない非行少年たちが描いた、丸型のケーキをうまく三等分できずに、縦に三分割したり、T字型に分割されたケーキの図。この図もかなり衝撃的で、物議を醸しそうだなと思っていた。

「境界知能」という、知的障害とは認定されないが学習能力などが低い少年たちが、飛行に走り犯罪を犯してしまうこと、その後の更生のためのプロセスも理解できないために、矯正プログラムが意味をなしていないということについて前作では書かれていた。

ただ、読み取り方によっては「だから犯罪を犯すような奴は知能が低くてどうしようもないんだ」と認識される可能性もあり、危うい本だなと思ったことを覚えている。

本書は、その「ケーキが切れない非行少年たち」に対する著者自身の回答として、認知能力の低い人たちに対してどう支援していくべきかということが書かれている。
支援者や保護者の関わり方、日常の態度や接し方をどうすべきかという点だけでなく、支援において最も大変な点であろう「支援したくないような相手だからこそ、支援しなければならない」という重たい現実についても深く掘り下げられている。

『どうしても頑張れない人たち』というタイトルだが、だからといって「頑張る必要はない」「あなたはあなたなんだ」みたいなありがちな逆張りに対しても本書ではNoを突きつけている。なぜなら、「頑張らなくてもいい」というのも、周囲によるひとつの押し付けだからだ。それは、決して本人に寄り添ったものではないと。

親から勉強をしなくてもいいと言われれば、そりゃお墨付きを貰ったも同然であって、ますます勉強をしなくなってドツボにハマることになる。これは勉強に限らず、「自由に育てたいので」とかいう方針で細かいことに怒らないという育児方針をとっていれば、社会での基本ルールが身につかないということにもつながる。
ただ、これらの基準はフワッとした常識の上に成り立っているものなので、どこまで踏み込むべきか、どこで止めるべきかという判断はとても難しい。

だからこそ、本書では頑張れない人たちが頑張るための基本となるべきものは何かから考え、安易に型枠へはめたような支援をすべきではないということを教えてくれる。そして、何より支援はとても大変で、支援者の心折れるような事態もたくさん起こり得るごいう現実に対しても、どうすべきかということが語られる。

是非前作と合わせて読んで欲しい。2冊合わせることにより支援のあり方を学べ、その先について考える手がかりをくれるだろう。