Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

読書

【書評】『死亡通知書 暗黒者』

死亡通知書 暗黒者 (ハヤカワ・ミステリ) 作者:周 浩暉 早川書房 Amazon 『三体』や『折りたたみ北京』などの中国SFをここ数年よく読んでいるんだが、今回読んだのは中国ミステリー。ハヤカワから出ているペーパーバック本で、アマゾンレビューも上場の本…

【書評】支援したくないような相手だからこそ、支援しなければならないという事実『どうしても頑張れない人たち~ケーキの切れない非行少年たち2』

どうしても頑張れない人たち―ケーキの切れない非行少年たち2―(新潮新書) 作者:宮口幸治 新潮社 Amazon 『ケーキの切れない非行少年たち』の続編。前作はかなり話題になっていたので、このブログでも感想を書いた。 tojikoji.hatenablog.com

【書評】科学の進歩がもたらしたディストピアの歴史『禍いの科学 正義が愚行に変わるとき』

禍いの科学 正義が愚行に変わるとき 作者:ポール・A・オフィット 発売日: 2020/12/08 メディア: Kindle版 グロテスクな装丁に『禍い』なんて禍々しいタイトルだったので、戦争や兵器の凄惨な歴史を紐解く本かな〜なんて手に取ったら全く違った。 本書は「…

【書評】カモノハシのスペックと歴史『カモノハシの博物誌~ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語』

カモノハシの博物誌~ふしぎな哺乳類の進化と発見の物語 (生物ミステリー) 作者:浅原 正和 発売日: 2020/07/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) 皆さんご存じ、カモノハシ。でも、実際はカモノハシについてどれくらいのことを知っているだろうか。 変わっ…

2020年に読んだ本のベスト

なんか今年はとんでもなく早かった気がする。自粛生活により日々の変化が乏しく、節目を感じるイベントもなかったからだろうか。個人的には毎年1回はフルマラソンを走っていたのに、今年はそれもなかった。仕事は部署異動で忙しくなり、家に帰るとクタクタ…

【書評】怒りが娯楽と化した現代への処方箋『「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症』

「許せない」がやめられない SNSで蔓延する「#怒りの快楽」依存症 作者:坂爪真吾 発売日: 2020/07/01 メディア: Kindle版 本書は主にTwitterで見られる「怒り」に焦点を合わせており、異様に渦巻く怒りや歪んだ正義がいかにして発生しているかを解説してく…

【書評】恐るべきポテンシャルの生物『ハダカデバネズミのひみつ』

ハダカデバネズミのひみつ 発売日: 2020/08/15 メディア: 単行本 ハダカデバネズミについて、そのインパクトのある名前と姿は当然知っていた。だが、内に秘めた驚異的なポテンシャルについて、僕は1割も知らなかったことを思い知らされた。 その名前と見た…

【書評】中国SFのベストアルバム的アンソロジー『時のきざはし』

時のきざはし 現代中華SF傑作選 作者:江波,何夕,糖匪,昼温,陸秋槎,陳楸帆,王晋康,黄海,梁清散,凌晨,双翅目,韓松,吴霜,潘海天,飛氘,靚霊,滕野 発売日: 2020/06/26 メディア: 大型本 ここのところの中国SFブームに乗せられ、Netflixで映像化が話題になった…

【書評】完全にIを超えたⅡ『三体Ⅱ 黒暗森林』

三体Ⅱ 黒暗森林(上) 作者:劉 慈欣 発売日: 2020/06/18 メディア: Kindle版 三体Ⅱ 黒暗森林(下) 作者:劉 慈欣 発売日: 2020/06/18 メディア: Kindle版 久々に止まらなくなった。夜更かししてまで一気読みしたのはいつ以来だろう。 完全に前作『三体』の…

【書評】リア充糾弾によりファシズムを学ぶ『ファシズムの教室: なぜ集団は暴走するのか』

ファシズムの教室: なぜ集団は暴走するのか 作者:田野 大輔 発売日: 2020/04/17 メディア: Kindle版 ファシズムと聞いて、なにを思い浮かべるだろうか。誰でも歴史の授業で聞いたことはあるだろう。そして、真っ先に浮かぶのはナチスだという人が多いだろう…

【書評】生活を学問する。『「家庭料理」という戦場: 暮らしはデザインできるか?』

「家庭料理」という戦場: 暮らしはデザインできるか? 作者:明教, 久保 発売日: 2020/01/14 メディア: 単行本 ”暮らし”を”デザイン”するという言葉は、CMや雑誌やネットで「よく目にする」言葉だ。 ホームセンター、家具屋、ファストファッションブランドの…

【書評】格差、幼稚でキレやすい同僚、カレーパン…『下級国民A』

下級国民A 作者:赤松 利市 発売日: 2020/02/29 メディア: Kindle版 本書は「住所不定、無職、62歳でデビュー」という異色すぎる経歴を持つ著者による、東日本大震災直後の東北での復興事業に従事した経験を記したルポだ。震災関連のノンフィクションなん…

【書評】戦略の面白さの凝縮形『3000年の叡智を学べる 戦略図鑑』

3000年の叡智を学べる 戦略図鑑 作者:鈴木博毅 発売日: 2019/12/18 メディア: Kindle版 世界的に有名な戦略について、イラスト付きでわかりやすく解説してくれる本書。 本書において著者は「戦略とは追いかける指標である」と提議している。この「追いかけ…

【書評】禁酒とは、自己探究であり、哲学だ。『しらふで生きる 大酒飲みの決断』

しらふで生きる 大酒飲みの決断 作者:町田 康 発売日: 2019/11/07 メディア: 単行本 僕は町田康さんの作品は未読。もちろん『告白』は知ってるし、随所で面白いという評を見るのでいつか読もうと積んでいるけど、とにかく今のところは未読。で、本書を取っ…

【書評】人生・生命・涙。テッド・チャン『息吹』

息吹 作者:テッド・チャン 発売日: 2019/12/04 メディア: 単行本 流石テッド・チャン。17年ぶりの新作で、『あなたのための物語』の高い高いハードルを余裕で越えてくれた。 まずは最初の「商人と錬金術師の門」どの書評サイトでもまずこの作品で大絶賛だっ…

2019年下半期に読んだ本のベスト

今年も面白い本をたくさん読ませていただきました。上半期は上半期でまとめたので、下半期に読んだ本でよかったものを5冊紹介します。 ◆三体 三体 作者:劉 慈欣 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/07/04 メディア: ハードカバー はい。ご存じ『三体』…

【書評】スマホ依存をやめられる人間になりたいです…『僕らはそれに抵抗できない「依存症ビジネス」のつくられかた』

僕らはそれに抵抗できない 「依存症ビジネス」のつくられかた 作者:アダム・オルター 出版社/メーカー: ダイヤモンド社 発売日: 2019/07/11 メディア: 単行本(ソフトカバー) 薬物、アルコール、ギャンブル、SNS…依存症という言葉で想起されるものは、ネガ…

【書評】そう、人の意見は変えられないのだ!『事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学』

事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学 作者:ターリ シャーロット 出版社/メーカー: 白揚社 発売日: 2019/08/11 メディア: 単行本 本書のタイトルを見た瞬間、「ああ、反ワクチン派の人や、代替医療にハマってしまう人たちのことかな……

【書評】成功のための裏口探しの旅『サードドア:精神的資産のふやし方』

サードドア: 精神的資産のふやし方 作者:アレックス バナヤン 出版社/メーカー: 東洋経済新報社 発売日: 2019/08/23 メディア: 単行本 18歳の医学部在学中の大学生が、ビル・ゲイツなどの超著名人たちに「成功の秘訣とは何か」をインタビューするために奔走…

【書評】ノー残業デーは、こっそり残業する日です!『 測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか?』

測りすぎ――なぜパフォーマンス評価は失敗するのか? 作者: ジェリー・Z・ミュラー,松本裕 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2019/04/27 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 「仕事の成果を数値で評価する」のはごくごく普通のことだ。幸い僕は…

【書評】見えざる「生きづらさ」をどう解決するか『ケーキの切れない非行少年たち』

ケーキの切れない非行少年たち (新潮新書) 作者: 宮口幸治 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/07/12 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る ちょっと前にTwitterでも話題になっていた本書。インパクトのあるタイトルで、「ケーキの切れない非行少…

【書評】そりゃ絶望もするし発狂もする『アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した』

アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した 作者: ジェームズ・ブラッドワース,濱野大道 出版社/メーカー: 光文社 発売日: 2019/03/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 「ワープア」って言葉、なんかあんまり聞かなくな…

【書評】架空の都市の架空の歴史の物語集『方形の円』

方形の円 (偽説・都市生成論) (海外文学セレクション) 作者: ギョルゲ・ササルマン,住谷春也 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2019/06/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ルーマニア人作家による、架空の都市について記述した短編集。小…

【書評】最先端の無人兵器解説書『無人の兵団』

無人の兵団――AI、ロボット、自律型兵器と未来の戦争 作者: ポールシャーレ,Paul Scharre,伏見威蕃 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/07/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 無人兵器の解説書として現状における決定版。何せ、技術の進歩…

【書評】中国SFってだけじゃなく、小説として最強『三体』

三体 作者: 劉慈欣,立原透耶,大森望,光吉さくら,ワンチャイ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2019/07/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 各所で話題になった本書。 やっぱり今は中国SFが熱いらしい。ケン・リュウも『紙の動物園』以降、…

【書評】素晴らしい主人公の成長物語『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 作者: ブレイディみかこ 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2019/06/21 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る これは凄く面白かった。著者はイギリスのブライトン市在住。既にイギリスで20年ほど暮ら…

【書評】ストーカー被害者救済のための福音書『ストーカーとの七〇〇日戦争』

ストーカーとの七〇〇日戦争 作者: 内澤旬子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2019/05/24 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る 交際相手が別れ話からストーカー化し、嫌がらせ行為などがエスカレートして警察が介入、逮捕、示談をするもそれを…

【書評】むしろこの著者ほど走ることにハマっている人いないと思う『走るやつなんて馬鹿だと思ってた』

走る奴なんて馬鹿だと思ってた 作者: 松久淳 出版社/メーカー: 山と渓谷社 発売日: 2019/06/15 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 走ることを続けるのは、とても難しい。僕はもうラン歴3年以上になるけれど、どちらかというとイ…

2019年上半期に読んだ本のベスト

4月から長男が小学生になった。学校からの課題で、長男は毎晩国語の教科書を音読している。つっかえつっかえだが、ひとりで本を読めるようになったというのは感慨深い。まだまだ親子間で同じ本を貸し借りして読むという僕の長年の夢を叶えるのは先になりそう…

【書評】古生物、それはロマン『知識ゼロでもハマる 面白くて奇妙な古生物たち』

知識ゼロでもハマる 面白くて奇妙な古生物たち 作者: 土屋健,加藤太一(ミュージアムパーク茨城県自然博物館) 出版社/メーカー: カンゼン 発売日: 2019/05/13 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 古生物にはロマンが詰まっている。…