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【書評】まさに死闘。『レッド・プラトーン 14時間の死闘』

 

レッド・プラトーン 14時間の死闘

レッド・プラトーン 14時間の死闘

  • 作者: クリントンロメシャ,Clinton Romesha,伏見威蕃
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2017/10/18
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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戦争モノのノンフィクション。ノンフィクションなのに、今まで読んだどの戦争小説よりも激しくて一気に読んでしまった。

 

本書はアフガニスタン北部の山岳地帯に作られた前哨「キーティング」にて、米軍兵約50人対タリバン兵300人の14時間に及ぶ死闘を、実際にその場で戦闘をして生き残ったレッド小隊のクリントン・ロメシャ二等軍曹が自身の経験と、生き残った兵士たちへの膨大な聞き取りをもとに、細部まで描き切った戦争ノンフィクションだ。

 

まず冒頭で戦闘の行われた前哨地「キーティング」の立地についての細かな説明がある。通常、こういった前哨地などの守るべき陣地は「敵よりも高いところ」に作るのが定石だ。古代から城や砦は防衛のために高いところに作られてきた。当たり前のことだが、低いところでは敵からの攻撃に対して格好の的になってしまう。

 

だが、キーティングではそれが全く逆の条件になっていた。周囲は3,000メートル級の山に囲まれた、すり鉢の底のような場所にあり、どの方角の山からも狙撃を受ける危険がある。

 

周囲の山へと続く道は狭くて険しいため、補給物資はヘリコプターによる空輸が基本だったのだが、そのヘリコプター着陸地点が前哨の横を流れる川を渡った先にあり、毎回ヘリから荷物を回収するために前哨の外側で戦闘等による着陸地点の安全確保から開始しなければならない状況だった。

 

そんな、防衛するには考えうる限り最悪な前哨にて、「こんな『死の罠』みたいなところに急襲をかけるなら、俺ならこうするね」とロメシャたちレッド小隊の面々が話していた通りの襲撃を受けることになる。

 

午前5時58分、夜明けとともに猛烈な砲撃がキーティングを襲う。キーティングの防衛は、「ガン・トラック」と呼ばれる武装を施した輸送用トラックと、迫撃砲。それらが一斉にRPGの砲撃を受け、さらには発電機までも破壊される。なんとか反撃しようにも、あまりにも激しい攻撃の前に部隊の統率どころか誰がどこで生きているのか死んでいるのかもわからない。

 

そんな中でも、何とかギリギリのところで持ちこたえ、さらに反撃をしていくレッド小隊の兵士たちがとにかく熱くてかっこいい。兵士一人一人についても本書の序盤で丁寧に描かれており、そんな彼らが命がけで防衛、反撃をしていく様にどんどん惹きつけられる。序盤からとんでもない猛攻にさらされ、防衛網に穴をあけられタリバン兵に侵入を許しているのに、いったいどうやって反撃して生き残ったんだ?その疑問も含め、飛び交う弾丸と立ち込める硝煙の臭いに読んでいる手が止まらなくなっていった。400ページ越えだが、完全に一気読み。

 

戦争ものが苦手でなければ、是非手に取っていただきたい。戦争小説よりもただひたすらリアルで恐ろしくて心に突き刺さる読書体験ができる一冊。