Under the roof

三児の父が育児、家事、読書のこととか書きます

【書評】霊長類研究と超エンタメSF『Ank: a mirroring ape』

 

Ank: a mirroring ape

Ank: a mirroring ape

 

 

2026年、京都。テロや略奪行為ではなく、「人がそれぞれお互いに殺し合う」という謎の暴動が起こる。「Kyoto Riot」と名付けられたその暴動は、SNSを通じて全世界に拡散され、突如お互いに殺し合うその衝撃的な姿に「ウイルス感染によるパンデミックだ!」とか、「ついに人類はゾンビの脅威に晒された!」といった様々なパニックを引き起こした。

 

しかし、実際は、ウイルスでもゾンビでもなく、たった1匹のチンパンジーが原因だった…

 

すんごく面白かった。去年読んだ『ここから先は何もない』クラス。

 

 

tojikoji.hatenablog.com

 

ストーリーの基盤となっているのは、霊長類研究。

人類は今や高度なAIを開発するに至ったが、それはあくまでプログラムに過ぎない。それとは違い、霊長類の研究を通じて「サルから進化した人類が、いかにして意識や言語を獲得したか」を解き明かし、本物の「人工知能」を手に入れる、という壮大なテーマがバックにある。『サピエンス全史』既読の人にとってはこれだけでワクワクしてくるだろう。

 

実際、本書だけでも人類と霊長類との大きな隔たりを学ぶことができ、霊長類研究という分野に興味を抱かせてくれる。ただ面白い小説ってだけでなく、人類とは、霊長類とは、サルとは、動物とは…と様々な知見を広げてくれる。

 

でもって、突如勃発する暴動によってとんでもないスリリングなシーンが続いていき、後半はページを手繰る手が止まらなくなる面白さ。科学分野に興味を抱かせるうえに、エンタメ性も満点の最高の小説だった。

 

途中の霊長類研究に関する部分が、全く退屈にならずにむしろ読みやすくてめちゃくちゃ面白かった。『サピエンス全史』を読んで面白かった人は本書を読んでそこから霊長類関連の本を読んでみるともっと楽しめると思う。

 

単純に面白い小説を探している人も、是非どうぞ。