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【書評】人類が見てきた宇宙の歴史『天空の地図』

 

天空の地図 人類は頭上の世界をどう描いてきたのか

天空の地図 人類は頭上の世界をどう描いてきたのか

  • 作者: アン・ルーニー,ナショナルジオグラフィック,鈴木和博
  • 出版社/メーカー: 日経ナショナルジオグラフィック社
  • 発売日: 2018/03/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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自宅から綺麗な星を見ることができるだろうか?

 

今住んでいる家でも、茨城の片田舎なのでたくさんの星が輝く夜空を眺めることができる。

ここよりも田舎にある実家に住んでいた頃は、もっとよく星を観察することができた。

 

そして、大気が汚染された現代よりも、先人たちは遥かに多くの星が輝く夜空を観察できたはずだ。

太陽、月、星の動きをもとに暦や航路を作り上げて、そのために天空を形にしてきた。現代のように観測技術が発達していなかった時代、その「天空を形にする」作業には「想像力」も用いられ、様々な形を作り上げていった。

 

本書はそんな、人間の想像力によって作り出された『天空の地図』と、技術の発達によって実際に撮影された『天空の地図』まで、様々な時代の宇宙を見ることができる。

とても美しい写真と、丁寧な解説。古代の先人たちが思い描いた天空の様子は、神や創造といったものに対する強い畏敬の念を感じる。

実際に技術が発展した現代においても、知れば知るほど宇宙の規模の大きさを思い知らさせるようだ。地球から最も近い月でさえ、写真技術のなかった頃の模写や、アポロ計画で撮影された月の裏側、最新技術によって撮影された月の重力図(岩石でできた惑星や衛星の重力は均一ではないらしい!)など、月の持つ多様な魅力を読み取ることができる。

 

また、先日読んだ『太陽系観光読本』のおかげで、太陽系惑星の写真はどれもとても魅力的に映った。

 

特に、個人的に行ってみたい惑星一位の土星の写真が素晴らしい。

 

土星の北極には、「ヘキサゴン」と呼ばれるとても綺麗な六角形がある。北極点を中心に、直径は地球の約2.5倍というとてつもなく大きなこの六角形は、地球の平均的なハリケーンの50倍以上の勢力を持つハリケーンが居座っていることにより存在する巨大なジェット気流だ。

 

土星はガス惑星なので、その表面に見られる地形はすべて気象次第である。しかし、この六角形のハリケーンは数十年以上の期間、土星の北極点に居座り続けている。NASAにより1997年に打ち上げられた土星探査機「カッシーニ」によって撮影された神秘的な六角形の渦を、本書では正面から見ることができる。

 

ほかにも、繊細な輪と緑がかった色合いの美しい天王星、青く輝く海王星など、見るだけで満足感の高い写真がたくさん掲載されている。

 

写真だけでなく、人間の想像力によって描かれた宇宙も、解説と詳細な書き込みに思わず見とれてしまう。人類が観測してきた宇宙とその歴史について学べる、宇宙好きにはたまらない写真集だった。