Under the roof

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【書評】禁酒とは、自己探究であり、哲学だ。『しらふで生きる 大酒飲みの決断』

 

しらふで生きる 大酒飲みの決断

しらふで生きる 大酒飲みの決断

  • 作者:町田 康
  • 発売日: 2019/11/07
  • メディア: 単行本
 

 

僕は町田康さんの作品は未読。もちろん『告白』は知ってるし、随所で面白いという評を見るのでいつか読もうと積んでいるけど、とにかく今のところは未読。
で、本書を取った理由は町田康ファンだからということではなく、禁酒に興味があったから。というか自分もできることなら禁酒したい。その思いだけはずっと持ち続けているが、今のところ成功したことがない。

別に毎日ビール○本飲んでます!とか、毎日甲類焼酎○杯飲んでます!もう酒なしではやってられません!ってレベルではないんだが、特に夜やることがなくて、ゆっくり本を読めるなんて日には酒を飲んでしまう。だいたい週の半分くらい、1回につきビール350mlを1缶かハイボール1~2杯ってとこだ。20代のころはもっとたくさん飲んだが、今は翌日に酒を残したくないのでそれくらいでやめている。それでも飲み過ぎだという見方もあるだろうし、まだまだ大丈夫という人もいるだろうけど、僕はもっと酒を減らしたい。できれば月1回くらいにしたい。月1回じゃ禁酒じゃないじゃん!というのは当然なんだけど、たまに友達と飲みに行くときくらい酒を飲みたい、というのをだいたい月1回のカウントとしている。酒は好きだし、誰かと飲む酒は美味しい。だからそれくらいありにして欲しい。自分に甘い。

なので、簡単には飲まないようにいっそのこと家では禁酒すべきだという自覚はある。だから今週は禁酒してランニングや筋トレ頑張ろうと決意するんだが、1週間も続けると「今日は飲みたいな!飲まなきゃやってられん!」という気分になり家でビールを開けてしまう。
飲みたくなる理由は人それぞれだろう。単に酒が好きな人もいれば、ストレスで飲まなきゃやってられんというのもあるだろう。僕はどっちもだが。
そのうえで、酒を飲んでしまう原因の一つに自分が料理好きというのもあると思っている。ネットで美味しそうなおつまみのレシピを見ると、どうしても作りたくなってしまうのだ。僕は特に辛いものや、レバーや砂肝などのホルモン系の食べ物が好きなんだが、そういった料理は子どもとともにする食卓には不向きなものばかりだ。なので、毎日の献立はバランスの良い食事を作り、金曜や土曜の夜などにひとり酒を楽しむために自分のためにつまみを作るのだ。
で、このつまみもよくない。夜深い時間に飲食するのは太りやすくなるばかりでなく、逆流性食道炎を招くことになり、ひいては食道癌のリスクを高める。酒にかかわらず寝る前の飲食にいいことなんて一つもないのだ。そういう様々な事象を包括して、僕はまず酒をやめたいと思っている。

長々と自分語りをしてしまったが、本書は酒好きで有名らしい町田康さんが、いかに禁酒するに至ったかを書くノンフィクションルポ…だと思って手を取ったらとんでもなかった。これは自らの思考をひたすら言語化して問答を繰り返す哲学書だった。古典の引用からはじまり、酒は「飲みたい」という気持ちこそ「正気」であり、飲まないという気持ちは「狂気」さえであると断じることから始まる。そしてその狂気をいかに自分に受け入れていくのかについて、ひたすら思索していくのだ。
自己を掘り下げることによって見えてくるものは多い。自分のことだと侮らずに、自分の考えをしっかりと文字として起こすことによって見えることもある。僕は今日、自分が逆流性食道炎になりたくないから酒をやめたいんだというひとつの結論に至ることができた。だからこそ、まず本書をみんな手に取り、自らの中に問いかけるという行為を初めて見るべきではないだろうか。酒をやめたいなら。