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【書評】久々に笑った科学本『ざんねんないきもの事典』

 

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

おもしろい!進化のふしぎ ざんねんないきもの事典

 

 

これは面白かった。久々に声を出して笑った本。

 

児童向けの本で、漢字には読み仮名がふってある。なんだけど、大人が読んでも面白くて笑える。

 

よくあるインパクト重視の過度に生き物の生態を誇張した本やネットの記事とは違い、本書ではまず冒頭で「進化って、なんだ?」と題し生物の進化の仕組みをわかりやすく解説してくれている。


突然変異や自然淘汰の仕組みをイラストを交えて説明してくれるので、生物に備わっている「ざんねんな」能力も、進化の過程によって獲得したものだという前提を学ぶことができる。

そして改めて、「ざんねんないきもの」たちの紹介。


見出し、解説、イラスト、生物の生息地や大きさなどの生態についてのプロフィールもしっかり記載されているので、生物学の本としてもしっかりした作りになっている。
ただし、見出しは明らかにインパクト重視で書かれているものがほとんどなので、完全にウケ狙いだろうなと邪推してしまう部分もあるが、だからこそ解説も含めて読むことで面白さが一層際立つ。

 

個人的に好きだったのは、「意味がない」とか「邪魔なだけ」とか、動物の持つ機能や姿を完全に無駄として切り捨てられているいきものたち。

 

例えば、冒頭のほうだと「バイオリン虫の羽の膜にはなんの意味もない」で思わず吹き出した。「なんの意味もない」ものに対して、イラストと生態を交えて科学本が1ページ使って解説することって普通はありえない。

 

まず始めに「バイオリン虫」って何?という疑問を突き放し、タイトルで力強く「意味ない」と煽ってくる。一応バイオリン虫についての軽い紹介があり、そのうえでなぜ意味がないのかを解説。読み物としても面白く、載っているイラストもかわいらしくて、そこはかとない哀愁が漂い残念さがより一層際立つ。

 

ほかにも、「ソレノドンの毒はあまり意味がない」とか、「コアリクイのいかくはまったくこわくない」など、ことさらに無意味さを強調する記事が面白かった。


とにかく多種多様な生物の「ざんねんな」能力が集まっており、何度読み返しても面白い。

 

tojikoji.hatenablog.com

 

 

先日紹介した「虫屋さんの百人一首」とともに、本棚の一番手に取りやすいところをキープするに値する、素晴らしい一冊だと思う。何より900円という安さがいい。小学生くらいのお子さんがいる家庭には、胸を張っておススメできる本だ。