2017年ももう半分終わる。次男も4月から保育園に通い始め、毎朝、そして毎夜、食事だ着替えだ登園だ風呂だと無限に続く育児ルーティーンであっという間に時が流れていく。自分の時間は仕事をサボりでもしないと取れない。
そんな日々でも、合間にちょこちょこと趣味の読書を挟んで自分の心の健康を保っていた。せっかくなので、2017上半期に読んで面白かった本をわずかだが振り返ってみようと思う。
◆老ヴォールの惑星
みんなこれが面白いことは知っていると思うけど、僕は今年の1月に読んだのが初見だったので改めて「面白かった」と言わせていただきたい。
中編が4つ収録されていて、ハズレなし。基本はSFなんだが、ホラー、ミステリー、感動、いろんな要素が詰まってる。
面白い小説を読みたい?だったらこれを読んでみて!と胸を張って薦められる。
◆フンボルトの冒険
著者の執念とフンボルトの魅力がすごい本。
18世紀当時、ナポレオンに次ぐ世界的な著名人だった『アレクサンダー・フォン・フンボルト』の人生について、そして彼によって多大な影響を受けたダーウィン、ゲーテ、ボリバルなどの半生について、膨大な取材量によって事細かに描かれている。
読めば読むほど、フンボルトの鬼才、天才、超人っぷりに驚かされ、笑わされ、感動さえする。こいつは何だ?知能とバイタリティと魅力と執念が全部すごい。本当にこんな人がいたんだレベル。是非、フンボルトの魅力にどっぷりと浸かっていただきたい。
◆サピエンス全史
これも今更僕が「いいよ」と薦めるような本じゃないんだが、読んでみて初めて分かる魅力がある。面白くて、読みやすくて、知見が広がる。こんな素晴らしい読書体験があるだろうか。
ただ「ホモ・サピエンス」の歴史を振り返るのではなく、なぜ我々ホモ・サピエンスは今日のような高度な文明を築き上げることができたかについて、「認知革命」「農業革命」「科学革命」の3つのターニングポイントを用いて詳細に掘り下げる。ああ、だから僕らはアリやイルカやカラスやサルとは違うんだな、と一歩引いた視点で見比べられる。
読んでみて絶対に損はない。文庫化されたら改めて買うと思う。
◆ヒルビリー・エレジー
ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち
- 作者: J.D.ヴァンス,関根光宏,山田文
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/03/15
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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アメリカの中央より少し東側に位置する「ラストベルト」に暮らす、白人労働者階級(ヒルビリー)の人たちが直面している、貧困、暴力、ドラッグといった社会問題について、ヒルビリーの一員だった著者自身のミクロの視点から描かれたノンフィクション。
頻繁に父親が変わり、ドラッグ漬けでヒステリックな母親に振り回されながらも、何とか自分を保ち弁護士にまでなった著者のストーリーは、下手な小説よりも面白い。
ただのサクセスストーリーではなく、とんでもなく危うい綱渡りをギリギリのところで周囲の助けにより「運良く」乗り越えてきたということがよくわかる。逆に言えば、環境に身を任せちゃえば普通はドラッグに手を出したり離婚を繰り返して、夢も希望もない貧困に陥るのが当たり前の世界があるんだなという空恐ろしさも感じられる。
トランプ大統領就任でにわかに注目を集める、白人労働者層の現実がよくわかり、かつ読み物としても面白い一冊。
◆心を操る寄生生物
僕の大好きなジャンルの科学本。ワクワクしっぱなし。
まずはインパクト大の寄生生物たちの生態。対象をゾンビ化させ操ってしまう寄生生物たちを見ると、気持ち悪さと進化の不思議さでゾクゾクが止まらなくなる。
そして、人間さえも腸内細菌によって肥満度や性格さえコントロールされているのではないかという研究についても書かれる。まだまだ日の浅い分野だが、マウスなどで実証されているデータもあり、自分のイライラや空腹は脳が感じるのではないのかも?という不思議な感覚になる。
読み手を飽きさせない、面白い分野の研究がたくさん詰め込まれた一冊。
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この半年に読んで、ブログに書いた本はどれも結構面白いものばかりだった。育児の合間を縫って読む、育児とまったく関係ない本たち。子どもたちの成長とともに、僕はホモ・サピエンスやヒルビリーや寄生生物の知識を得て、心に平穏をもたらしていた。