ある新興宗教の代表者宛に届いた脅迫めいた手紙。そこには「1から1,000までの数字でひとつ頭に思い浮かべろ。浮かべたあとに同封の小さな封筒を開けろ」と書かれていた。
指示に従い一つの数字を思い浮かべて小さな封筒を開けると、そこには思い浮かべたのと全く同じ数字と「おまえが思い浮かべる数字はわかっていた」のメッセージが…
どっかで見たことあるような、だけどミステリー好きの興味を引くには充分すぎる導入の謎。
そして、これを皮切りに様々な謎解きと連続殺人とスペクタクルが絡み合う怒濤の展開。久々に寝る間を惜しんで読み、後半200ページは徹夜で突っ走ってしまった。
絶妙なのが、登場人物、特に主人公の絶妙な心理描写が頻繁に描かれているところ。
様々な難事件を解決してきたが、仕事第一にしてきたがために蔑ろにしてきた家庭を顧みるため退職し半隠居のような生活を送っていた元刑事のガーニー。
この主人公がまあザ・ハードボイルドな感じなんだが、実は内面的な弱さや葛藤を抱えてそれらとギリギリの折り合いをつけながら事件に向かっていく様子がめちゃくちゃかっこいい。
ガーニーは目の前で起きた事件について考えずにはいられない性質で、しかも明らかに登場人物の中でも飛び抜けて有能なので、ほかの刑事とかに事件を任せちゃえよ!って状況でもない。
だから読者としてはガーニー頑張れなんだが、そこに今まで蔑ろにしてきたが故に何度も失敗してきた家庭生活への葛藤が絡んで、ああもういろんな意味でガーニーおじさん頑張れ!なんとか危うい家庭と仕事のバランス取って頑張ってくれ!って思わずにはいられない。
肝心な謎解きも最高で、最後まで全く飽きずに突き進んでしまった。海外ミステリーだけに映画化とかしてほしいけど、主人公の心理描写が多すぎて映像化は難しいかな…
有能な刑事が挑む不可解な謎解き。ミステリーとしてはオーソドックスだけど、その濃密さが素晴らしい。海外ミステリーが好きなら是非手に取ってほしい一冊。