『バーナード嬢曰く。』という漫画をご存じだろうか。
読書好きで読書ブログ覗くような人なら認知率はかなり高いんじゃないだろうか。読書好きの登場人物たちが読書あるある的な出来事を交わし合う学園日常的な漫画で、元ネタの本を知らなくても楽しめるし元ネタを読んでいるとより面白い。
で、それの5巻にこの『カササギ殺人事件』が登場する。
本の内容にはほとんど触れずに、ただ登場人物たちが上巻を読み終わった後、本書を薦めてくれたミステリー好きの長谷川さんに「下巻ある?」と尋ねる。
長谷川さんはそれを聞いて「それ一番聞きたかった言葉です!」と、震えながら喜ぶ。
興味を引くと同時にかなりハードルを上げる書かれ方。とはいえ、個人的に『バーナード嬢曰く。』に登場する書籍の面白さには全幅の信頼を寄せているので、まあ面白いんだろうな…と期待して読んだら期待通りの結果だった。ミステリーやSFには、そのジャンルばかりに傾倒する愛好家がたくさんいるイメージだが、本書はそういった深くハマった人を納得させるような『ミステリー愛』にあふれた作品といえる。
というわけで、カササギ殺人事件は間違いなく面白いんだが、それ以外に自分が「下巻ある?」となった一気読み案件の本を紹介してみたいと思う。
貴志祐介『新世界より』
下巻あるどころか上中下の3巻組のうえ、文庫でも3冊重ねれば鈍器になりそうな厚さなんだが、これこそ一気読みして、徹夜して、そして続きは明日にしようといったんベッド入ったけどまた起きだして読み始めてしまうレベルの面白さ。なんとなく夜中目が覚めたときにスマホいじらずにとりあえずこれを開いてしまうくらいハマった。
SFでバトルで恋愛でパニックホラーで…ととにかく世界がどこまでも広がっていき、その作りこみの綿密さも凄い。かなりの長編なのに、下巻に入ったくらいで終わるのが惜しく感じた。SF好きの方なら是非。
中島らも『ガダラの豚』
これも説明不要かも。ただ、80年代後半から90年代くらいのテレビバラエティを見てきた世代の人のほうがより面白く読めると思う。つまり僕ら昭和末期生まれが空気感含めて楽しめる世代としてはギリギリかもしれない。
とはいえ、そのエンタメ性がかなり高いので読み始めればスラスラとストレスなくどんどん読めてしまう。得体のしれない恐怖感と生々しさも魅力の一つ。深く考えずに面白い小説を読みたいときにお勧めしたい。
グレゴリー・デイヴィッド・ロバーツ『シャンタラム
オーストラリア出身の脱獄囚がインドのムンバイでスラム街の医師になる話。なんだけどこれも旅に恋愛に友情に戦争に…と、とにかく物語のうねり方がすごい。脱獄囚である主人公にどこまでも付きまとう孤独感と、それでも受け入れてくれるスラムの雰囲気が素晴らしい。孤独と自由は無限に広がっていることを教えてくれる。
ダン・シモンズ『ハイペリオン』
言わずと知れたSF長編。『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』『エンディミオン』『エンディミオンの覚醒』とすべて上下巻の4シリーズなので全部で8巻にわたる超大作なんだが、これも読みだすと止まらなくなるうえにあとから途中途中を読み返しても面白いんだから参ってしまう。いつもスマホのkindleアプリに入れておいてやることない時に何となく見返してしまう。そんな、いつ読んでも面白い小説。
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というわけで、下巻あるどころか3巻組以上の本たちばかりになってしまったが、どれも面白いので未読で長編読みたいという方々にお勧めしたい。