2017年下半期に読んだ本のベスト
今年も終わり。本はそれなりに読んではいるが、しっかり読み込んでブログ記事にまでした本は少なかった。
そんな中でも、とくに面白かったと感じる本をフィクション・ノンフィクションとそれぞれ3冊ずつ紹介したいと思う。
今年の上半期はすでにまとめてあるので、7月以降の下半期に読んだ中からチョイス。
まずはフィクション部門。
◆ここから先は何もない
日本が打ち上げた無人探査機が、火星近郊の小惑星『ジェネシス』へ向かいサンプル回収するはずが、なぜか接近中に別の小惑星『パンドラ』へと着陸。そして回収したサンプルから発見されたのは、なんと『エルヴィス』と名付けられた化石人骨だった。なぜ、探査機は別の小惑星へと目標を変え、しかもそこには人骨が埋まっていたのか…
このプロットだけ見てJ・P・ホーガン『星を継ぐもの』っぽいと思った人は多いだろう。で、中身はまるで藤井太洋『オービタル・クラウド』のような疾走感。エンタメ小説として最高峰。
◆母の記憶に
ケン・リュウの短編集第二弾。前作『紙の動物園』も最高だったけど、これもハズレなしの短編集。
翻訳ものにこんなこと言うのはどうかとも思うが、文章の臨場感やら表現力やらが凄い。引きずり込まれるような熱い短編、涙腺を崩壊させられる短編と、パターンも様々。
次回作が楽しみです。
◆湖畔荘
今年一番のミステリー。謎が解けていく様をよく「パズルのピースがハマっていく」という表現をするが、これはそのハマり方がもう完璧すぎて、思わず小説相手に「ウソだろ!」って言ってしまうようなよくわからない状況になった。
話が出来すぎていて冷める、というより、巻末の解説にもあるがこれは『大人のおとぎ話』と言うような内容。
ネタバレ怖くて詳しくは言えないが、擦れたストーリーの小説たちに毒されてきた自分が恥ずかしくなるような清々しい結末を見せてくれる。今年一番のミステリーというより、今まで僕が読んだ中で最もキレイに「パズルがハマった」小説と言いたい。
続いて、ノンフィクション部門
◆バッタを倒しにアフリカへ
「ダ・ヴィンチ」とか「HONZ」とか様々なメディアで取り上げられて、ベストセラーにもなり書店でもいまだに平積みされている本書のことを今更とやかく言うことはないんだが、まあ面白くて本当に読んでよかったと思えた。
ひょうひょうとして、ちょっとおふざけも交じっているようで、実際はとんでもなく熱い。情熱がメラメラ燃えているのを感じる。
アフリカ西海岸、サハラ砂漠ど真ん中のモーリタニアで、単身バッタ研究をするために様々に奔走する姿にまずグッとくる。研究者になるという道のりの厳しさと、その夢を叶えるための努力や戦略も、すべて著者の熱量が感じられてグイグイ引き込まれる。
夢に向かってひた走るということは、こういうことだ!っていうのを目に焼き付けられた。本当に素晴らしい。
◆鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ 。
ふざけたタイトル、中身はしっかり生物関連の科学本で知見が広がり、かつ「鳥類学者」の実態や研究方法も綴られた社会学的ノンフィクションでもあり、それでいてふんだんにボケが散りばめられた珠玉の面白エッセイ集でもある。
本当に著者は鳥類学者なの?超人気エッセイストとかブロガーとかじゃないの?って疑わしくなるくらい文章が上手い。しかも研究の内容が面白そうで本当に羨ましくなる。
何度読み返しても面白い。もう最高。こういう本をもっと見つけたい。
◆大惨事と情報隠蔽
大惨事と情報隠蔽: 原発事故、大規模リコールから金融崩壊まで
- 作者: ドミトリチェルノフ,ディディエソネット,橘明美,坂田雪子
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2017/08/22
- メディア: 単行本
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原発事故、原油流出、金融危機、大規模リコール…などなど、様々な事故事例について詳細に記述された、ボリューム満点のノンフィクション。どの事故についてもその酷すぎる経過が手に取るようにわかる。
さらに本書では、そういった大事故から情報隠蔽により最悪へと突っ走らないための教訓や手法を掘り下げて解説もしてくれる。トラブルに対するべき・べからず集としても有用な一冊。
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以上が下半期に読んだ本のフィクション・ノンフィクションそれぞれのベスト。
今年は生物学系の面白いノンフィクションが多かった。中でも『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』には、面白い本、面白い文章、面白い科学とはこういうものだ!というものを見せつけられた。誰かに面白い本ない?と聞かれたら、無条件に薦めたくなる一冊だった。